日本車の得意市場に異変あり? タイ「モーターエキスポ」で中国勢が存在感
今年の「タイカーオブザイヤー」は、やはり中国メーカー製の「MG 3ハイブリッドプラス」が受賞した。小型5ドアハッチバックのストロングハイブリッド車で、26.2km/Lの低燃費と手頃な価格が評価されたという。私自身は運転していないので日本のハイブリッドカーとの比較はできないが、燃費と価格でいえば競争力が高そうなクルマだ。ちなみにMGは伝統的な英国車ブランドだったが、ブランドを保有していた英国のMGローバーが破綻した際、中国の自動車メーカーである上海汽車が買収したという経緯がある。
■タイの自動車市場、現状は? モーターエキスポでの新車予約の結果だが、1位はトヨタが獲得したものの、なんと2位につけたのはBYDだった。3位にホンダ、4位にAION(アイオン)、5位にMG、6位にDEEPAL(ディーパル)、7位に三菱、8位に日産、9位にGWM、10位にNETA(ネタ)と続き、上位の多くを中国車が占める結果となった。とりわけBYDの存在感が際立つ結果だ。 予約が成立したクルマ全体の41.3%を占めたのはEVだった。もちろん各社の販促による後押しがあったには違いないが、タイでEV購入検討者が増えているという傾向は読み取れる。 タイ市場全体では、依然として日本メーカーが高いシェアを維持している。2024年1月~10月の数字では日本勢の乗用車シェアが63.2%、中国勢が19.4%だった。ただ、ショーのデータほどの影響は出ていないものの、近年、徐々に中国車のシェアが拡大しているのも現実だ。ちなみに、商用車については全体の84.4%が日本車と圧倒的なシェアを獲得している。 タイで勢いを増す中国のEVメーカーにも悩みはある。タイの新車販売自体が低迷気味で、特にEVでその傾向が強いことだ。また、中国EVメーカーの多くは、近い将来の現地生産を条件に現在の関税を免除してもらっているため、今後、規定された台数のEVを現地製造するという義務を負っている。すでに中国のEVメーカーからは、タイ政府に台数削減の陳情が出ているとも聞く。このまま中国車が勢いを増していくかどうかは不透明な情勢だ。 個人的には、これまで同様、多くの人に日本車が愛されるタイであってほしいと願うばかりである。
■ 大音安弘 おおとやすひろ 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
大音安弘