三菱電機との協業でPLC向けセキュリティセンサーを提供--Nozomi Networks
同社は2024年3月、Series E追加投資ラウンドで1億ドルの資金調達を実施し、三菱電機とSchneider Electricからの投資を受けたことを発表している。Arc Embeddedが実現した背景にはこうした三菱電機とのパートナーシップ強化があり、国内のPLC市場で大きなシェアを持つ三菱電機製品に対応したセキュリティセンサーを製品化したことで、OT/IoT分野でのサイバーセキュリティ対策が大きく進展することが期待される。 現在のOT/IoT分野におけるサイバー攻撃は、従来は孤立したネットワークとして構築されており、外部からの侵入は容易ではなかったOTシステムがITと接続され、インターネットからもアクセス可能な形になったことで急増した経緯があるが、Carcano氏は「OTシステムをターゲットとしたサイバー攻撃のうち、IT経由のものはおよそ50%だ」としており、内部犯行や、USBメモリーなどのデバイスを現場に持ち込む形でのITを経由せずに実行される攻撃も無視できないとした。 さらに、IT側でサイバーセキュリティ対策を強化したとしても、OTに関する知識がないと十分な防御は難しいと同氏は指摘し、その具体例としてPLCに対する攻撃を挙げた。PLCが実行するプログラムコードには認証などのプロセスはないため、PLCにコードが送り込まれると即実行されてしまうリスクがある一方、IT側のサイバーセキュリティ対策ではPLCのプログラムコードを理解できる製品がないため、PLCに対して不正な動作を実行させるプログラムコードを含むファイルも正常なドキュメントとして見逃してしまう可能性が高いという。 この点からも、Arc EmbeddedはこうしたOTシステム特有の攻撃手法への対策として有効だと期待される。なお、Arc Embeddedは三菱電機からMELSEC iQ-Rシリーズのオプションとして販売されるほか、既に同製品を運用中の顧客が別途Arc Embeddedを購入して組み込むことも可能だという。 TI Expansion Pack, Powered by Mandiantは、Nozomi Guardianセンサーのアドオン拡張機能として提供されるゼロデイ脆弱性などの情報更新サービス「Nozomi Threat Intelligence」にIT分野の脅威インテリジェンスサービスで著名な「Mandiant」の情報を組み合わせる形でさらに拡張するもの。「Nozomi NetworksとMandiantとの脅威インテリジェンスを組み合わせることで、IT、OT、IoT全体で脅威の検出と対応が強化され、サイバーセキュリティ防御が最大限に強化される」と説明している。 Nozomi Asset Riskは「7つの異なるリスク要因を考慮し、資産、施設、企業レベルでのリスクを計算し、報告する、堅固な新しいプラットフォーム機能のセット」で、想定されるリスクを明確化するほか、さまざまなセキュリティ強化策によるリスク低減効果をシミュレーションすることも可能だという。 日本市場に関しては2018年から展開し、現在は110社以上での導入実績があるという。日本カントリーマネージャーの芦矢悠司氏は、当初電気・水道・ガスなどの重要インフラ企業から導入が始まったが、現在では製造業での採用が拡大していると紹介した。日本向けの投資も積極的に実施しており、国内での人員を倍増するなど対応強化に努めていると明かした。 最高マーケティング責任者(CMO)のMike Plante氏は、グローバルで実施した調査の結果として「主要5カ国のサイバーセキュリティのリーダーの85%がOT環境に影響を与えたサイバーインシデントを1件以上報告」していると紹介。日本ではさらに高い割合の89%に達するとして、OT環境が運用停止に追い込まれるような深刻なサイバーインシデントが増加しているとした上で、同社のソリューションによって顧客は「業務の回復力と安全性の向上」「リスクの軽減」「コンプライアンスの強化」といったメリットを期待できるとした。