これから金利が上昇しても「住宅ローンは〈変動金利〉を選んだほうがいい」納得の理由
変動金利が固定金利を上抜くためには
ウエノ:その優遇幅は、金利の上昇によって縮小されたりしないんですか? 深野:住宅ローン返済開始後に延滞などがあると、優遇が取り消されたり優遇幅が見直されることもありますが、基本的にはきちんと返済が行われていれば、優遇幅は金利が上がってもそのまま引き継がれます。 なので、優遇という制度がある限りは「変動金利が固定金利よりも高くなる」という現象はかつてより起こりづらいのです。 ウエノ:たとえば、現在は固定金利の代表格である「フラット35」の全期間固定金利タイプの最低金利は1.86%(2024年12月)になっています。一方で、ネットバンクなどを使うと変動金利は0.5%くらいで借りられるようです。 深野:その状況だと、変動金利が固定金利を上抜くためには、日銀が0.25%幅での利上げをあと6回(現在は0.25%)しないといけません。それでようやく変動金利の適用金利が“現在の固定金利”の適用金利を逆転します。 日本経済の将来を俯瞰すると、そのような利上げをはたしてできるのか……。あるいは6回の利上げができたとしてもその水準を維持できるかというと、かなり疑問ですね。
長期で見れば変動金利が有利になる
ウエノ:そう考えると、しばらくは変動金利のほうが有利なんですね。 深野:また、仮に6回の利上げをして固定と変動の差が逆転したとしても……金利が高い状況というのはそう長くは続きません。 金利が上昇した後のピーク圏は1~2年ほどです。近年のアメリカを見ても、10%近いインフレが起きて景気が過熱して政策金利を5.50%まで引き上げましたが、こうした状況は1年3か月ほどしか続きませんでした。 ウエノ:そもそも、5~10年も継続して政策金利が上がり続けるという状況は考えづらいわけですね。 深野:そうです。たしかに金利がピークをつけたときには一時的に「短期金利が長期金利よりも高い」という逆転現象が起こることもあり得ます。ただ、その後はまた金利は下がっていくはずです。 そう考えれば、一時的に変動金利が固定金利を上回ったとしても、住宅ローンの平均的な返済期間である30年前後の長期間のトータルで考えれば変動金利のほうが有利になると思われるのです。
深野 康彦(ファイナンシャルリサーチ代表)