今夜注目世界再戦の村田諒太は“哲学”で勝つ!
プロボクシングのダブル世界タイトル戦(12日、エディオンアリーナ大阪)の前日計量が11日、大阪中央区のホテルで行われ、WBA世界ミドル級王座奪還に挑む同級4位の村田諒太(33、帝拳)はリミットに200グラムアンダーの72.3キロでクリア、王者のロブ・ブラント(28、米国)はリミットに300グラムアンダーで計量をパスした。村田は、今回、パワーを存分に生かすために体重を落とし過ぎないように計画減量を行い、試合前日の心境を「落ち着いている。プレッシャーがあった方がいい。自信がある」と語った。9か月のブランク、足と手数で圧倒され王座から陥落した前回の試合内容……とネガティブな要素が多く、大手のブックメーカーのオッズも村田不利となっているが、村田は達観の境地。その支えとなっているのは、読書家の彼が出会った一冊の哲学書「自省録」だ。“戦う哲学者”と呼ばれるほどの勉強家の村田は、敗れたことで、大きく、そして強くなった精神力を武器にリマッチに挑む。
一冊の哲学書「自省録」との出会い
計量後のフェイスオフは約15秒にも及んだ。 「あんなもんでしょう。あそこでニコやかな感じはできないですからね。彼も人間としていい子。リスペクトしながらね」 もちろん睨みつけてはいたが、あくまでも撮影用のポーズ。どこか遠くを見るかのように目線が涼しかった。それが終わると自ら握手を求めた。終始、表情は穏やかである。 負ければ引退の崖っぷちのリマッチ。しかも、戦前予想は大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズがブラントの1.28倍に比べて村田に3.5倍をつけるほど厳しい。悲壮感やイラ立ちがあってもおかしくなかったが、村田は達観したかのように落ち着いていた。 「今回は落ち着いている気がします。前回は、計量のとき、相手にいらついたりしていて計量会場で“KOします”と宣言したりしました。でも、いらだちはなく落ち着いています」 昨年10月にラスベガスで行われたブラントとの2度目の防衛戦前日の心境とは明らかに違う。 落ち着きの理由の一つには、米国と地元関西の環境の違いがあるという。 「アメリカ、敵地でやるときにパフォーマンスが悪くなる原因のひとつにプレッシャーから解放されることがあります。見てくれる人が日本よりも少ない。国内でやるプレッシャーが必要なことだと感じています」 必要なのは適度な緊張感。 そして村田は、こう続けた。 「自信があります。やってきたことをやるだけ。いまさら格好をつけることなく、虚栄を張ることもなく。そういう精神です」 村田が、こういう最強のメンタルを手にできたのには一冊の哲学書との出会いがあった。 ローマ五賢帝の一人と言われたマルクス・アウレリウスが書き残した哲学書「自省録」である。ローマ皇帝になる前は、哲学者になることを望み、ストア派の倫理学を学んできたアウレリウスが、ローマ皇帝として戦いに明け暮れる日々の中で、自省しながら自らに言い聞かせるように「生きているうちに善き人であれ」という考え方を書き綴った哲学書である。