オンラインカジノ、高校生にも広がる危険な実態 教育が重要、「ギャンブル依存症」の教員も多い
リアルのギャンブルよりも依存症になるスピードが速い
犯罪がらみの相談も年々増えており、同会の調査によれば、オンラインカジノも含めてギャンブルをやっている人は、オンラインカジノをやっていないギャンブラーよりも逮捕・犯罪率が高いという。若者の場合は、お金の工面の際に闇金に手を出して闇バイトに勧誘されるケースや、ネットの扱いに長けているので違法にお金を得る手段につながりやすい傾向があるのではないかと田中氏は推察する。 また田中氏は、オンラインのギャンブルは依存症になるスピードが速く、重症化しやすい傾向にあると警鐘を鳴らす。 「麻雀やパチンコなどと違い、オンラインカジノやスポーツベットは24時間365日できてしまうので、やめ時がありません。また、いくらでも賭けられるのであっという間に使う金額が大きくなります。親御さんが気づいた時には600万円入っていた銀行口座が空になっていて、慌てて相談に来たケースがありました。オンラインの公営競技においても、3000万円をつぎ込んだ高校生もいます。両親、祖父母、おじおばまで親戚中のお金を使っていたのですが、お金を出さないと暴れてしまうので、大人たちがお金を出し続けてしまったのです。とくに地方は世間体を気にして家族で抱え込む傾向があり、深刻な問題となっています」 同会が研究者と行った調査では、ほどほどにギャンブルを楽しめる愛好家のギャンブル開始年齢が平均30.6歳であるのに対し、依存症者は18.1歳という結果が得られたという。 「ギャンブルを始めるのが早いほど依存症になりやすい傾向があると言えます。少なくとも学生の間はギャンブルをやらないほうがいいでしょう。昔からギャンブルをやっている学生はいましたが、麻雀やパチンコなどリアルなものが中心で、一気に依存症になることはありませんでした。しかし、今の若年層はオンラインのギャンブルがメインなので、あっという間に依存症になってしまうのです」
ギャンブル場に子どもを連れて行ってはいけない
ギャンブル依存症になりやすいタイプや傾向などはあるのだろうか。 「ギャンブル依存症は誰でもなる可能性がありますが、第一の危険因子は遺伝だと言われています。また、親が依存症ではなくても何かしらギャンブルをやっていれば、その子どもは小さい頃からギャンブルに親しむことになり、依存症のリスクが高くなります。近年はさまざまな公営競技でキッズスペースを設けたり、子ども向けイベントを行ったりしていますが、ギャンブルが行われる場に子どもを連れて行ってはいけません。それで後悔している親御さんを何人も見てきました」 また、ギャンブルが身近にある環境で育った子のほかにも、ギャンブル依存症のリスクが高い子どもがいるという。 「海外の研究では、引退したアスリートはギャンブル依存症のリスクが高いことがわかっています。当会でも、運動部でバリバリ活動していた子が引退後や受験後に、打ち込むものがなくなってギャンブルにのめり込んでしまうという相談は多いですね」 では、実際に子どもがギャンブル依存症になってしまったら、どうすればいいのだろうか。田中氏によれば、(1)依存症に対するスティグマを払拭すること、(2)本人が相談しやすい体制を作ること、(3)家族が正しい知識を持つこと、という3つがポイントだという。 「まずは偏見を捨て、家の中で抱え込まずにご家族が相談機関に行きましょう。そして、本人の借金の尻拭いをしないこと。家族がいっさいお金を出さなければ、本人も相談に行かざるをえなくなりますから。民間の相談機関である当会では、さまざまな職業や年代のギャンブル依存症経験者が支援に当たっていて、相談者の状況に合わせてGA(Gamblers Anonymous:自助グループ)や回復施設につないだり、借金の解決に当たったり、きめ細かいサポートを行っています。高校生や大学生の当事者の場合も同様に、GAを紹介して、歳の近い仲間とつないであげるようにしています。ギャンブルサイトをブロックするアプリ『Gamban』をスマホに入れ、本人の家族にパスワードを設定してもらうなどの環境づくりも支えています」