低賃金と過重労働! 全く報われない「バスドライバー」を復活させる、たった2つの画期的方法とは?
評価が生む新たな信頼の輪
ふたつ目のアイデアは、「利用者の評価をボーナスに反映する仕組み」だ。これは、利用者からのフィードバックを集め、ドライバーのサービス評価に反映させ、その評価をボーナスに結びつけるものだ。 例えば筆者のような大学教員は、講義の内容について学部生・大学院生から定期的に評価を受けている。評価が高い教員は 「ベストレクチャー賞」 として表彰され、次のボーナスが増額される大学も多い。この方法を路線バスにも応用し、ドライバーのサービスを利用者が評価できるシステムを取り入れるのだ。 最近はDXの進展で、車内のQRコードから評価を送信できるようになっている。利用者がスマホでドライバーを評価し、それをボーナスに反映させる仕組みを作るイメージだ。ただし、低評価があった場合にはドライバーの側にも 「事情」 があるはずなので、高評価の人にだけプラスのインセンティブが与えられる仕組みが望ましい。評価システムは、時間通りの運行といった単一の基準だけでなく、次のような多面的な視点でも評価する必要がある。 ・接客態度 ・安全運転 ・清潔感 こうすることで、ドライバーも幅広い視野で業務に取り組むようになる。複数のインセンティブがあれば、さまざまなサービスの質向上に士気が高まるし、利用者も 「真剣にバスのことを考えるきっかけ」 になるだろう。ドライバーと利用者がともによりよいサービスを作っていく促進にもなる。もちろん、導入にはメリットだけでなく懸念点もある。評価基準が曖昧だと不公平に感じられることもあるし、利用者からの 「意図的な低評価」 のリスクもある。ドライバー側の意見も尊重しながら、このシステムを育てていくことが大切だ。
利用者の声で変わる未来
ここまで紹介したふたつの方法の社会的意義は、 「単にドライバーの収入を増やす」 ことだけではない。前述のとおり、サービス提供者と利用者が一緒に路線バスを考えるきっかけになる点が大きい。利用者が積極的に参加することで、 「自分も路線バスの維持や発展に関わっている」 という意識が育つのが、このアイデアの狙いだ。 以前、筆者の記事に対するコメントを読むなかで、 「収入を増やさないとドライバーが続かないのではないか」 という声が、利用者やドライバーの両方から多く寄せられていた。バス業界を研究する者として、給与を上げる難しさも伝えてきたが、やはり収入増加を望む声は根強い。だからこそ、今回のような投げ銭や利用者評価制度の導入は、利用者と協力して進められる点でよりよい方法だと考えている。 利用者が積極的に参加できる仕組みがあれば、ドライバーの士気も自然と高まり、路線バス全体の活性化が期待できる。こうした仕組みの導入により、サービスの質や業界の健全な成長にもつながるだろう。 地域の足を守るためには、まずドライバーが安定して働ける環境を整えることが基本だ。この重要性を考慮しつつ、新しい仕組みを導入できることを望んでいる。
西山敏樹(都市工学者)