「愛子天皇」を9割の国民が熱望…そのウラで多くの人が犯している「勘違い」
多くの国民が「勘違い」している
では実際にどういった手続きを踏めば、愛子さま即位への道が開かれるのだろうか。現実的な手順をシミュレーションしてみよう。 勘違いしている人も少なくないが、女性天皇を実現するために憲法改正は必要ない。 「憲法第2条は、〈皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する〉となっていて、天皇の性別に関して規定していません。皇室典範を改正すれば十分です」(小田部氏) 皇室典範はあくまでも法律であるため、国会で過半数が賛成すれば改正は可能。憲法に比べてハードルは低い。中でも大きく変更が必要なのは、これら2つの条文だろう。 第1条〈皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する〉 第12条〈皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる〉 天皇と男性のみの血縁でつながった関係を「男系」、間に1人でも女性がいる関係を「女系」という。愛子さまは父が天皇陛下である男系女子のため、第1条を改正する際は、文中の「男子」を「子女」とすればいい。 しかしそれだけではご結婚されると皇室から離れてしまうので、結婚後も皇族の身分を保てるよう第12条も変える必要がある。これがいわゆる「女性宮家」の創設だ。 ほかの法律と同じく国会で皇室典範の改正を決議しこれらの条文を変更すれば、女性天皇の実現は可能だが、実際に改正するとなると道のりは険しい。法政大学教授の白鳥浩氏が解説する。 「皇室典範は国家の根幹に関わる法律であり、改正するとなれば国を二分する議論になりかねない。そう簡単に改正できるものではありません。 仮に手を加えるとなれば、議論の流れを作るのは国会ではなく政府でしょう。世論の動向を見つつまずは有識者会議を立ち上げて、答申を受けたという体裁を整えてから、特例法を制定する形で進めるはずです」 その先のプロセスを考えるときに参考になるのが、2017年に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」だ。上皇さま(当時は天皇陛下)の「おことば」をきっかけに生前退位に関する議論が盛り上がり、皇室典範の本則は改正されなかったものの、生前退位という「例外」を認める特例法が成立した。 だがいきなり女性天皇に関する特例法の議論を始めてしまうと、問題が大きすぎて結論を出しにくい。白鳥氏が予想するのは、第12条と第1条それぞれに対応する形で、2段階かけて進むというシナリオだ。 「まずは佳子さまと愛子さまが結婚後も皇室に残れるよう、女性宮家の創設に論点を絞った有識者会議が設置され、特例法を成立させるのではないでしょうか。そして愛子さまが皇室から離れないと決まった段階で、あらためて女性天皇について検討する有識者会議が立ち上がると考えられます。 会議で結論が出るまでに約2年、立法に約1年かかるとして合計で6年。実現するとすれば、早くても2030年あたりになるでしょう」 国民の9割が容認しているにもかかわらず、「愛子天皇」の実現は不可能に近い。悠仁さまという皇位継承者がいらっしゃるのはもちろんだが、理由はそれだけではない。後編記事『なぜ愛子さまは「天皇」になれないのか…9割の国民が望んでも難しい「根本的な理由」』にて、解説する。 「週刊現代」2024年6月29日・7月6日号より
週刊現代(講談社)