RIZEが語る再始動の理由、ロック・バンドの「奇跡」を信じる男たち
幸せのために「バンド」をやっている
―ええ、わかります。Rioさんから見て「他の現場ではなくRIZEでしか味わえないもの」というと何になりますか? Rio:多分、1ミリも仕事でやってないっていうところ(笑)。 金子ノブアキ:間違いない!(笑)。なにしろホントに目標を設定したことが一回もないですね。最初から。昔から「目指せZEPP!」みたいなのすらなかった。普通にやっていただけで転がっていって……まあ、生まれた時から運が良かったともいえるけど。 Rio:だからホントに今回も、久々に友達から呼ばれたから遊んでやろうか、みたいな感覚でしかなくて。 KenKen:バンドをやってると、やっぱどうしてもデカくなっていくことが成功だと思ってしまいがちじゃん? 箱のサイズがどんどんデカくなっていって集客が上がっていくと、それが成功だっていう話になる。だけど俺、それと幸せは別のものだってことがよくわかってきて。誰と何をやるか、そこだけでいいんだなって思うようになった。 ―つまり、RIZEは幸せのためにやっているバンドだということですか? KenKen:うん。たとえば2万人集められてたはずのバンドの動員が1万人になったら、大概はそこで「半分になっちゃった!」って凹むわけじゃん? それはやっぱ、音楽じゃなくてビジネスの話になってしまってるからだと思う。そうじゃなくて俺は「まだ1万人も来てくれるんだよ」っていう考え方でありたいし、そこで超大事なのは誰と今まで生きてきて、今日この日に誰と演奏するんだろうってこと。この5年ほど、初めてマネージャーとかもいない環境で自分でいろいろやるようになってみた時に、それをすごく感じさせられましたね。 ―ちなみにマネージャー無しの環境下でいちばん大変だったのは? KenKen:ダブル・ブッキングですかね(笑)。あれは怖い。ホントに30代前半まではベースを弾くことだけをやらせてもらえる毎日だったけど、それはもう皆さんのおかげでやれてたことだから。ただ、毎日ベースを弾くっていうところはだけは、これまでの人生、何があっても変わらなかった。で、その時に「自分って何だろう?」っていう自問がまた同時に始まるわけですよ。その時にやっぱ「RIZE=自分」ではないんだけど、自分が存在するために当たり前のように存在するのがRIZEなんだって思えたし。 金子ノブアキ:俺はシンプルに、みんなと戻って来れてホントに嬉しいんですよ。もうそれだけですね。「ああ嬉しい!」って感じ。 ―そういえばKenKenを説得するにあたり、JESSEとはそれ以前から合意できていたんですか? 金子ノブアキ:JESSEとは、ある時に待ち合わせをして蕎麦を食いに行って話をしたことがあって。ただ、その流れの最初の段階で超面白かったのは、彼がずっと俺の古い番号に電話をかけてたこと。今の番号じゃなくて、なんと中学の時の。 KenKen:すっげえ古い!(笑) 金子ノブアキ:何故かその電話番号がメモリに残ってたみたいで、知らない人の留守電にめちゃくちゃメッセージを残してたらしい(笑)。で、全然応答がないもんだから、俺がめっちゃキレてると思い込んでたみたい(笑)。で、ある時「あっくんの番号ってこれだよね?」というメールが届いて「JESSE、それは昔のだよ」と伝えたら「やべえ、知らない人にめちゃくちゃ留守電残してた!」って。それで新しい番号を伝えて「飯でも行こうよ」と誘って。だからそのJESSEとの会話のスタート自体が最高だった(笑)。 KenKen:その携帯の持ち主も驚いてただろうね。めっちゃ一方的に何度も謝られて(笑)。 金子ノブアキ:その出来事がワン・クッションとしてあったのも良かった。最初からそうやってエピソードがついてくるのがJESSEらしいというか、RIZEらしいというか。 ―確かに。さて、今回の再始動を待ち焦がれていた人たちの中では期待感が高まりきっているはずですが、そんな人たちにはどんな心持ちで会場に足を運んでもらいたいと考えていますか? KenKen:初めてRIZEを観る人も多いだろうね、きっと。 金子ノブアキ:初めての人も、これまでずっとお待たせしちゃってた人たちも、とにかく期待を膨らませておいて欲しいですね。こっちとしては、間違いないものを提供できる確信があるから。めちゃくちゃ楽しいことになるはずですよ。 KenKen:俺としては、ロック・バンドというのが何だったかを思い出したいね、みんなと一緒に。多分今回、すごくシンプルに「カッコ良きゃいいんだぜ!」というところが見せられると思う。そのカッコ良さのためにテクニックが必要だったりとか、そういう他のものが全部ついてくる。「カッコいいからそれでいいじゃん」で済まされるものというか、それが許される唯一の職業がロック・バンドだと思ってるから。だからなんか、四の五の言わずにとりあえず観てみて、みたいな。なんで俺らがこれを辞めずにいるかってことはライブを観てもらえればわかるはずだし、俺はRIZEを今のキッズに見せたい。小学生とか中学生とかにも、どうせ嵌まるならこんなカッコいいバンドに嵌まって欲しい。しかも大人になった人たちにとっても、ただ懐かしいだけのものにはならないはずだし。俺らは進化してるけど、真ん中に通ってる芯は何も変わってないしね。肉付きがみんなちょっと変わってきてるだけで(笑)。だから今の個性がいっそう出てくるんじゃないかな。 ―「こういうRIZEであるべき」みたいなものに縛られる必要がないからこそ、今の自分たちがストレートに出る、ということでもあるわけですね。 KenKen:うん。俺のためのRIZEでもあるし、あっくんのためのRIZEでも、JESSEのためのRIZEでもある。みんなでひとつのものを掲げてそれを目指すというより、各々がちょっとずつ違ってても、RIZEって言えるんだったらそれでいいんじゃないかなって思えてますね。今は。 Rio:いろんなものに容易に触れられる時代だからこそ、その場にいないと感じられないものというのを持っていたいし、それをみんなにも体験して欲しい。そこに尽きますかね。こっちはリラックスした気持ちでそこに臨めそうだし、絶対いいツアーになるはずだから、あとは感じに来てもらうだけです。 ―そして重要なのは、このツアーを経た後、次に何をしたくなるかってことですよね? 金子ノブアキ:うん。ただ、何かしらやるんでしょうけど、それが何になるのかはまだわからないし、決めてもいないし。 KenKen:俺ら自身、動き出すことを決めただけで。これから実際にやってみないとわからないことがたくさんあるから。 金子ノブアキ:多分、JESSEがステージ上で言ったことを次に現実にしていくことになるんじゃないかな。きっと、勢いで「来年アルバム出すんで!」とか言っちゃうと思うんですよ、全然何も作ってないうちから(笑)。自分たちでもそこで「え? マジで?」みたいなことになりそうな気がする。というわけで、ステージ上でJESSEが何を言うかにも注目しておいて欲しいですね。きっと何か、予告すると思うんで。 KenKen:うん、未来日記みたいな感じでね。