RIZEが語る再始動の理由、ロック・バンドの「奇跡」を信じる男たち
コロナ禍を経て
―コロナ禍においては、活動スタンスというか音楽人生のあり方について考え直したミュージシャンも多かったはずです。 金子ノブアキ:いろいろと考えさせられたのは確かですよね。「ライブハウスをなんとかしなきゃ」みたいな意識もロック・バンドはみんなあったはずだし、誰もがあれこれと天秤にかけながら苦しんでたと思う。 KenKen:しかもそこでの正解はひとつじゃないしね。 金子ノブアキ:人それぞれの考え方があるからね。だからホントにきつい時期でもあったけど、特に若いバンドたちは、上を目指していくうえでの梯子を外されたも同然の事態になっちゃっていたわけで、それゆえに生き抜けなかったバンドも少なくなかっただろうと思う。今になってようやくすべてが戻ってきたようなところがあるけど、だからこそ、そこで若い世代のバンドたちとフックアップしていくことの重要さもすごく感じていて。それこそ最近coldrainがやっているのもそういうことだし、The BONEZも、俺たちよりも若い世代のバンドたちと渡り合ってるのがすごいなと思う。 KenKen:昔はどうしても「RIZEのJESSEがやってるThe BONEZ」だったけど、今ではその逆の見方をしてる人もすごく増えてるはずだし、それも素晴らしいことだと思う。 ―Rioさんの場合、コロナ禍での心境変化などはありましたか? Rio:俺の場合、実はコロナ禍の直前に一個バンドを作って、CDも作ったりしてたんだけど、結局全然ライブもできないから、ろくに活動できなくなってしまって。ただ、創作面については、そもそも俺の場合は家でひとりでやるものだったりするから、個人的にはあんまり変わらなかったし、引きこもりタイプの自分としてはむしろ都合いいんじゃないかと思える部分もあったかな(笑)。 金子ノブアキ:わかる! 俺もそう。なにしろ締切りがないから時間がたっぷりあるし、失敗できるわけですよ。いろんな実験をして、それがすぐにうまくいかなくても構わなかった。その意味では、めっちゃ楽しかったんですよ。だからいろいろなことが滞りはしたけど、かならずしも意義のない時間ではなかったと思う。 KenKen:しかもそんな流れを経て、今、バンドが過去最高に仲のいい状態にある気がするし。昔の子供の頃に戻って、しかもそこに、こうして付き合いの古いRioもいてくれて。実際みんな、RIZEがなくても飯食っていける状態にはあるんだよ。だけど、そこで大事なのは「なんでRIZEをやりたいか?」なんだと思う。俺としては、今、カッコいいと思えるロック・バンドが少ないないから、それを自分でやらなきゃいけないと思った。自分がいちばんカッコいいと思うことをやるための場だと思うしね、ロック・バンドって。 ―こうして再始動とか復活がニュースになる時というのは、筋書きありきというか、先々のリリースなども決まった状態にあるケースが多いと思うんです。ただ、ここにはまるでそういった匂いがないんですよね。 KenKen:うん。普通はこういう時、もうシングルとかがあったりするんだろうけど。 金子ノブアキ:今の時点でそういうことは何ひとつ決まってないので。「まずはツアーをやって、その後で合宿にでも行って曲を作る?」みたいな。来年とかには新曲もひっさげた状態でやりたいなというのもあるし。なにしろすっごくシンプルなものを作りたいんですよ、2分半ぐらいで終わっちゃうみたいなのを。 KenKen:ライブ自体もすごくシンプルになると思う。メンバーがそこに立ってるだけで成立するカッコ良さみたいなものをRIZEは持ってると思うし、それは最近のエンターテインメント型のライブとはちょっと違うんじゃないかなと思う。「これをやったらお客さんが喜ぶんじゃないかな」というものを提供するのも素晴らしいことだけど、RIZEの場合は、俺たちが好きでやってることをどんだけの人たちが楽しんでくれるかだけでいいんじゃないかな、と思っていて。それが本来あるべきロック・バンドの姿なんじゃないかとも思うしね。実際みんなも忙しいから、ツアーまでに多分、おそらくリハにも4回ぐらいしか入れないと思う。でも、7年近くやってなかったバンドを観たいと思ってれてる人がこれだけいてくれてる時点でもう奇跡レベルだと思うし、しかもそれを家族でやれてるなんてもっとミラクルじゃん? それは今、すごく思ってる。この人たちがファミリーだったから自分はここまで来れてたんだなって。 ―複数のバンドをやっていると、その場によって自分のスイッチを切り替えるような部分もあるのかもしれませんが、RIZEの場合はむしろ、すべての設定を解除してしまうような感じなのかもしれませんね。 KenKen:ああ、確かに。逆に言うと、OFFにするものがひとつもない感じ。 金子ノブアキ:だから実際、集まっても特にあれこれ喋るわけでもなく、普通にそこにいるだけなんですよ。それだけで成立するのってホントに家族ぐらいじゃないですか。「最近どう?」みたいなやり取りすらない。そういったバンドの空気はRIZEならではのものだと思うし、それこそフェスとかの楽屋にいたりすると、他との違いがわかりやすいのかもしれない。 KenKen:世界的に見てもここまでのファミリー・バンドってあんまりいないはずだし。しかも俺はRioとも十代の頃にライブハウスで出会ってるし。あっくんとJESSEは生まれた時から一緒にいる2人だからね。 金子ノブアキ:こっちからすると「生まれてきた!」だったから(笑)。 ―ところで、具体的なリリース計画を決めてはいないとはいえ、新しいアイデアとかはすでに抱えているはずですよね? KenKen:そうだね。リフは山ほどあるかも。 金子ノブアキ:この先のイメージとしては、やっぱりシンプルな、IQの低そうな感じがいいかな、と(笑)。コーチェラ・フェスに出ていたブラーが「Song 2」をやってるのを見て、あの感じがいいなと思った。リフだけでガーッとやって、そのままいきなり終わっちゃうみたいな。かつて俺たちが感じてた90年代の風というか、歩いてた道というか、あの頃に「最高!」って思ってたもの。それを呼び起こせるのはここしかないし、他ではできないんですよね。たとえば今は、新しい機材とかプラグインで試せることとかも多々ある。だけどそういうことじゃないんですよ。なんだか時間を重ねていくほどに代わりがきかないものになってきてるから。なにしろ気が付いてみれば数年後には結成30周年がやって来るわけだし。そんな今、なんで俺がKenKenのところに通い詰めて「やろうぜ!」と説得したかといえば、ここであの曲たちをやる必要があると思ったからなんですよ。なにしろ中学生の時に作った曲とかもあるくらいだし、それはもう作れないものだから。RIZEはその曲たちの再生装置なんですよ。そして、それを俺たちがやる以外に選択肢はないから。 KenKen:90年代のカッコ良さって、直撃世代じゃなかった人たちは絶対リアルにはわからないだろうと思う。70年代とか80年代のサウンドは、ぶっちゃけ、機材とかにこだわれば作れるところがあるんだけど、90年代は時代的にもちょうど境い目の頃だったし、あの時代のカッコ良さを肌で感じてないと無理なんだろうなと思うことがある。 金子ノブアキ:しかもそれは、3~4年のごくわずかな期間でしかなくて。 KenKen:その時にちょうど10代のキッズでいれたってことがまたミラクルなんだよね。 金子ノブアキ:だからこそ、これができるのは俺たちしかいない。悲しいことに亡くなってしまった方たちもいたりする中で、確かにこのバンドの場合も執行猶予の件とか問題はいろいろあったけど、全員がこうして無事に生きていて、今もキレッキレの状態であれてるという事実。そうあれている以上、やる以外に選択肢はないんです。「ちょっと腕は落ちてるけど、そこはご愛敬で」というやつじゃないんですよ。全員の切れ味がまったく落ちてないっていう希少性がある。それは、これまで各々が重ねてきた経験があるからであって、そんなみんながこの場に戻ってくると完全にRIZEになるというのは、ホントにバンドならではの不思議な現象としか言いようがなくて。それはここじゃないと成立しないことだし、すごく貴重なことだと思うわけです。