尹大統領が傾倒した「不正選挙論」…防諜司令部内では「根拠なし」
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が12・3内乱を合理化するために「不正選挙陰謀論」を主張している中、国軍防諜司令部内では今年の夏ごろに「不正選挙陰謀論は根拠なし」という趣旨の文書が作成されていたことが確認された。尹大統領は非常戒厳時、防諜司を「選管のサーバ奪取」に用いようとしたが、肝心の防諜司内には「不正選挙論」を一蹴する声があったのだ。 16日のハンギョレの取材を総合すると、ヨ・インヒョン国軍防諜司令官は今夏ごろ、同司令部のチョン・ソンウ秘書室長(当時。現防諜司第1処長)に「ユーチューブで主張されている選管の不正選挙の話はいったいどういうことか」と述べ、インターネット資料のまとめを指示した。ヨ司令官は最近の検察による取り調べで「総選挙後の初夏、尹大統領は時局を心配する話をしているうちに感情が高ぶり、戒厳の話をはじめた」、「尹大統領は不正選挙疑惑について言い続けた。それに伴って非常措置が必要だということも言っていた」と供述している。ヨ司令官は尹大統領らが総選挙での敗北後に「不正選挙論」に傾倒していることを受け、このことについての資料のまとめを要求したとみられる。 しかしチョン・ソンウ秘書室長は、むしろ不正選挙論の虚構性を警告する趣旨の報告書を作成した。チョン・ソンウ秘書室長は報告書で「報告者の意見」として「争点化された大半の不正選挙疑惑は最高裁判決ですでに確定しているため、もはや消耗的論争は不要だ」、「裁判所の判断すら信じられないのに客観性の欠如した無理な疑惑を提起し続ける集団の一方的な主張とは、距離を置く必要がある」と指摘した。 またチョン室長は「選管および健全なメディアや市民の普遍的視点からすると、不正選挙疑惑は受け入れ難い」としつつ、3つの理由をあげて不正選挙論に反論した。その3つとは、訴訟を起こした原告が不正選挙の主体および証拠について提示していないこと▽不正選挙にかかわった不特定多数の良心宣言がまったくないこと▽4年の間に起こされた不正選挙関連の訴訟ですべて不正選挙が認められなかったこと。 チョン室長は報告書の末尾で「選挙後、予想外の結果を受け入れ難かった特定の陣営を中心として、一部の疑惑は提起されることもありうるが、自由民主主義および選挙システムが高度化した大韓民国社会では実現し難い主張がほとんど」だと結論付けている。 このように、防諜司の内部にも「不正選挙の虚構性」を指摘する声があったが、尹大統領ら内乱の核となった勢力は12・3内乱時に防諜司を「不正選挙の根拠」探しに用いようとした。ヨ・インヒョン司令官は戒厳時、自身の秘書室長から第1処長となっていたチョン・ソンウ処長に「選管のサーバをコピーするか、丸ごと持ち出せ」と指示した。しかしチョン処長は法務室による検討の後、選管のサーバー奪取には違法性があると判断し、指示を実行しなかった。 チョン・ソンウ第1処長はこの日、「このような問題の対話の相手が大統領と国防長官だと推定されるというのは、当時は想像できなかった。衝撃的」だと述べた。 イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )