ノーベル賞の賞金「1億5700万円」…なぜ“経済学賞”だけ「課税される」のか?【税理士解説】
経済学賞だけが「課税対象」とされる理由
なぜ、経済学賞だけが課税対象とされているのか。黒瀧税理士は、その理由が経済学賞の成り立ちにあると指摘する。 黒瀧税理士:「所得税法の規定をみると、『ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品』を非課税としています(所得税法9条13号ホ)。 ノーベル基金は、ノーベル財団が運用する基金です。ノーベル財団はノーベルの遺言によって設立された『生理学・医学賞』『物理学賞』『化学賞』『文学賞』『平和賞』を運営しています。 これに対し、『経済学賞』はスウェーデン国立銀行が創設し、1969年から授賞が始まったものです。選考は『物理学賞』『化学賞』と同じスウェーデン王立アカデミーが担当し、舞踏会や晩さん会も他の賞と同様に行われ、賞金の額もまったく同じです。 わが国でノーベル賞の賞金が非課税扱いになったきっかけは、1949年に湯川秀樹博士が『物理学賞』を受賞したことです。当時、そのような栄誉ある賞の賞金に課税すべきではないという議論が起き、急きょ、所得税法が改正されたのです。 その時点では『経済学賞』は創設されていませんでした。また、『経済学賞』が設けられてから、これまでに受賞した日本人はいません。なので、特に問題視されず、結果として非課税の特典が与えられないままになっているものと考えられます」 ノーベル賞受賞時に日本国籍だった受賞者(日本の税制の適用対象)は2023年までの合計が25名。全6賞のうち受賞者がいないのは『経済学賞』のみである。今後、果たして日本人の受賞者が現れることはあるのか。その際には、賞金を非課税扱いにすべきという議論が起きることになるのだろうか。注目される。
弁護士JP編集部