「字はきれいさより濃さを褒める」小学校受験に役立つ家庭学習のコツ
子どもの字が上手ではないとき、親はなんと声をかければよいのでしょうか? ついダメ出しをしたくなってしまいますが、それだと子どもは自信を無くしてしまうかもしれません。 私立小学校教諭として18年勤務されたなごみゆかりさんが、子どものやる気を引き出す家庭学習のコツを伝授します。 小学校受験を控えるお子さんはもちろん、勉強嫌いのお子さんにもぜひ試してみてください。 ※本稿は、なごみゆかり著『忙しいママでもできる! 私立小学校を受験しようと思ったら読む本 』(日本能率協会マネジメントセンター)から、一部抜粋・編集したものです。
子どもの字のきれいさより、字の濃さをほめよう
受験を考える親御さんは、きっとお子さんの力をもっともっと伸ばしたい。可能性を広げてあげたい。そんな親でありたいと日々考える、愛情深い、一生懸命な方だと思います。 だからこそ、ついつい理想が高くなり、こちらの要求するレベルにお子さんが達しないと、不安になったり、お子さんに腹を立ててしまったり、最後には、そんな自分に自己嫌悪に陥ってしまったり…と、感情が揺れ動き、どっと疲れることもあるかもしれません。そんなとき、おすすめの方法が「できたこと」に目を向ける受け止め方です。 ペーパー試験を課す学校だと、解答を短い時間で、できるだけ丁寧に的確に書けるのがよいとされています。そうすると、字が雑な子にはつい「もうちょっときれいに書いて」とか、「書き直しましょう」などと言ってしまうこともありますよね。 でも、そうやって「よかれ」と思って声をかけている親御さんの気持ちに反して、子どもは「ダメ出しされた」「いつも注意ばかりする」「ママ(パパ)はぼく(わたし)に怒ってばかりいる」という受け止めをしてしまいます。それは避けたいはず! そんなときには、このように伝えてみましょう。 「字が濃くて見やすいね~」 すると、あれれ。お子さんは、俄然やる気が出て、「あとちょっとやろうかな」と練習に取り組んでくれたりします。字が雑な子というのは、教師経験から言っても、丁寧に何かをすることよりも、ほかの何かに価値を置いている場合が多いのです。たとえば、身体を動かす方が好きだったり、本を読んだりお話を聴く方が好きだったり、自由に絵を描くことが好きだったりします。となると、文字を丁寧に書くというのは苦手分野かもしれません。 苦手な物事に取り組むことって、大人でも気合が必要ですし、できれば避けて通りたいと思いませんか? わずか5歳6歳のお子さんたちが、苦手分野の克服に向かって頑張っているわけです。親御さんたちには、ぜひそれを考えて応援してあげてほしいのです。 ちなみに、毎日「字が濃いね」だと、変化がないので、 「昨日に続けて今日も濃くて見やすいね」 「今日も相変わらず字が濃いね」 「いつも濃くて見やすいよ」 と、変化させていってください。 これだけ「字の濃さ」についてほめられたお子さんは、字を書くことに前向きになっ ているに違いありません。やる気が出た子は、今度は「字を丁寧に書く」という、次のステージに勝手に進んで行ってくれます。どうぞ安心して、心からお子さんの字の 濃さをほめ続けてくださいね。 ちなみに、入試のペーパー試験に限らず、字が濃いことは入学後もとても大切な力になります。筆圧の強さは小学校低学年でしっかり育まれ、図工にも生きてきますし、作文などでも、字が薄いと、読み手に(先生に)負担を与えます。字が濃いことは、相手への思いやりにもつながっているのです。小学校中学年~高学年になると筆圧を自分で調節することもできますから、ぜひいまのうちに字の濃さを身につけさせてください。 そして、勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、いまお伝えしたことは、学習面に対しての「成果」ではなく、「過程(取り組み方)」をほめていることになります。 肝心なことは、お子さんに「継続してもらう」こと。継続してもらうには、まず「やる気を出してもらうこと」。そのやる気は、親御さんの接し方、声のかけ方にかかっています。ママ・パパも楽しんで声かけをしてみてくださいね。