大物アーティストも開催する“性別限定ライブ”のメリットは?
限定することでコアなファン以外にもライブ会場への門戸を開放!?
とはいえ、音楽不況が叫ばれる昨今。人気アーティストでさえも、CDの売上は苦戦を強いられているのが現状だが、そうした中であえて客層を絞る限定ライブを行うメリットはあるのか? 芸能評論家の三杉武氏はこう語る。 「人気アーティストの場合は、ライブには行ってみたいけど争奪戦が激しくてなかなかチケットが取れないというファンのために、あえて性別などの限定条件を作ることでチケットを手に入れやすい状況にし、普段会場に来られないファンにも、ライブを楽しんでもらおうといった狙いはあると思います。大物アーティストになると、ファンクラブの会員でもないと、なかなかライブを観に行けないというケースも多いですからね。例えば、女性ファンが多いアーティストのライブの場合、『男性限定』という条件をつけることで当然、男性ファンは通常よりもチケットを取りやすくなる。本当はライブに行きたいけど、普段は女性ファンばかりで居心地が悪そうという人も会場に足を運びやすくなりますからね。『女性限定ライブ』などもしかりです」 さらに、こう続ける。 「既存のファンのニーズに応えるだけでなく、昔から『名前や代表曲は知っていたけど、実際にライブを観たらますますファンになった』というケースが多々あるように、アーティストにとってライブは新たなファンを獲得するための格好の舞台でもあります。限定という形で客層を絞ることで、結果的には普段から頻繁にライブを観に来るコアなファンだけでなく、より多くの人にライブ会場へ来てもらい、実際にパフォーマンスを観てもらうことはそれなりのメリットもある。ただし、広く門戸を開放する一方で、ある程度計算できるコアなファン層の動員を事前にあえて限定するわけですから、それなりのリスクも伴いますけどね」 CD不況が叫ばれる昨今では、昔以上にライブに力を入れているアーティストが増えている。“限定”というリスクを抱えつつ、結果的にはコアなファン以外にライブ会場への門戸を開放する限定ライブは、今後日本の音楽業界に定着するのか? (文責/JAPAN芸能カルチャー研究所)