「友達、つくろうよ」で始めたラグビー、デビュー戦で右ひざを大けが…… それでも部を辞めなかった
ちょっと前の話になるけれど、年に1度のゴールデンウィークの出来事だ。 4連休の真ん中の、5月4日のことだった。 【写真】昨年12月、3部残留を決めて抱き合って喜ぶ東京都立大学の選手たち 文字通り、雲一つない青空。これ以上ない休日だ。どこへ遊びに行こうか……。 そんなプレシャスな一日に、律義に学校のグラウンドへと集まる学生たちがいた。 人工芝の照り返しは厳しい。体感気温、余裕で30度を超えていた。 東京都立大学ラグビー部。関東大学リーグ戦3部に所属する。昨年はリーグ戦でたった1勝しかできず、8チーム中の7位に終わった。4部2位との入れ替え戦行きを強いられて、終了間際の大ピンチを何とか耐えて、引き分けて、ギリギリで3部残留を果たした。 あの入れ替え戦から、もう、5カ月が経とうとしていた。 あんなにも冷や汗で綱渡りの時間、もう、懲り懲りだ。 それでも、彼らは、グラウンドに帰って来た。 彼らは、何を部活に求めているのだろうか。 何を、探しているのだろうか。
戻った「日常」
後輩の様子が気になって、練習を手伝おうと駆けつけたOBたちがいた。 目の前に、新入生を加えた選手たち。今年は多いぞ。30人ほどに達している。 思わず、つぶやいた。 「日常の景色、戻ったな」 決して強いわけでもなく、有名なわけでもないラグビー部だ。部活をまっとうすれば就職が保証されるわけでもない。ラグビーのために都立大の門をたたく学生は、まず、いない。 そういう部だから、コロナ禍であっというまに存亡の危機に追い込まれた。「コロナ元年」だった2020年と2021年の新入部員は片手で数えるほど。コロナそのものはもちろん、世間を覆う自粛ムードの打撃をまともに食らった。 新歓のあり方を翌年から見直した。楕円(だえん)球に触れたことすらない初心者にまで、声をかけてかけてかけまくる。誘い文句は「ラグビーやろうよ」じゃなくて、「友だち、つくろうよ」。そうやって、先細る部の歴史をつないできた。 そして、ようやく、「日常」は戻って来た。 今年の新入部員、選手は11人。そのうち競技経験者が8人を占める。試合に先発する15人をそろえるのさえ苦労した時期を知るOBたちが、感慨にふけるのも無理はなかった。