<中間選挙>共和党勝利でも何も変わらないアメリカ政治 上智大学教授・前嶋和弘
4日に行われたアメリカの中間選挙では、共和党が下院での多数派を維持しただけでなく、上院でも多数派を奪還しました。この結果は直前の各種世論調査からほぼ予測されていましたが、それが実際の結果としてあらわれたことで、世界のメディアは一斉に「オバマ政権はこれで終わったようなものだ」と競ったように報じています。今回の結果は今後のオバマ政権のかじ取りやアメリカ政治に対して、どんな影響があるのでしょうか。「何が変わり、何が変わらないのか」をそれぞれまとめて考えてみます。 【写真】最大の争点は「オバマ」だった米中間選挙
「オバマ政策」に共和党が攻勢へ
オバマ政権としては今回の選挙をきっかけに、完全にレ―ムダック化していくと思われます。オバマ政権が2012年の大統領選挙の公約の一部として、これまで繰り返して主張してきた最低賃金引き上げや富裕層増税、環境規制強化など積極的に推進するのは、中間選挙の結果を受けて、だいぶ難しくなりました。特に大規模な財政支出を伴うような政策は止まってしまうでしょう。 対照的に共和党側は勢いづいています。上院共和党のリーダーであり、自分自身も当初は接戦の中で勝利したマコーネル(ケンタッキー州選出)院内総務も来年1月からは多数派党を仕切ることになり、医療保険改革(オバマケア)の部分的中止なども視野に入れて攻勢をかけてくるでしょう。 オバマ政権や民主党のリーダーたちはすでに共和党への妥協を視野に入れた動きを始めています。 一方で、今回の選挙の結果を受けたアメリカの新しい議会(第114議会)は来年1月からスタートです。まだ2か月近くあるため、オバマ政権としては動けなくなる前に年末までの期間を有効に使う選択肢もあります。例えば、中間選挙後に先送りしていた、大統領権限での移民規制改革を実際に行う可能性も論じられています。大統領権限での移民規制改革はそもそも議会での共和党の反発を迂回する奥の手です。 もし、この手を使った場合、共和党側からは大反発も予想されます。「大統領権限での移民規制改革を行った場合、オバマ大統領を弾劾する」という強硬な声も共和党の中にはあるため、オバマ大統領としては難しい選択になります。