ポケモンGOのナイアンティック、AR体験「Niantic Park」を都立明治公園に提供。広範囲3DスキャナPhotonで園内をデータ化
ポケモンGOやピクミンブルーム、モンハンNowのナイアンティックが、都立明治公園を管理運営するTokyo Legacy Parks株式会社と戦略的パートナーシップを結び、園内でAR体験が楽しめる「Niantic Park」を提供すると発表しました。 【この記事の他の写真を見る】 明治公園は国立競技場の南に隣接する都立公園。Park-PFI(公募設置管理制度)により、Tokyo Legacy Parks株式会社(TLP)が管理しています。 TLPとのパートナーシップのもと、ナイアンティックが公園全体を詳細に3Dスキャンすることで、デジタルの世界とリアルの公園が融合するような、高度なARアプリを開発者が提供できるようになります。 ■ ナイアンティックと現実世界のデジタル化戦略 ナイアンティックはGNSS等を用いた位置情報ベースのゲームやサービスを提供する一方、現実世界とデジタルをより高精度に重ね合わせるAR技術の研究や開発プラットフォームにも力を入れてきました。 (少し前までは「メタバース」がバズワードだったため、ナイアンティックは「リアルワールド・メタバース」企業を名乗っていた気がしますが、最近は他の多くの旧「メタバース」系企業と同様、「空間コンピューティング」企業と称しているようです) ここ数年のナイアンティックは、現実世界を詳細に3Dスキャンしてデジタルの複製を作ることに力を入れてきました。2021年に買収したアプリ Scaniverse もそのひとつ。 Scaniverseは無料の iPhone / Androidアプリとして誰でも利用でき、小物から部屋の間取りまで驚くほど精緻に、3Dで撮るカメラのように3D化が可能です。 スキャンしたデータはあとから自由な角度で映像化したり、オンラインで共有したり、メタバース等の他アプリに取り込む、3Dプリントするといった使い方ができます。 2024年春のアップデートでは最新技術の3Dガウシアンスプラットに対応し、従来はスキャンが難しかった水やガラスといった物体も、草木など細かなものも取り込みやすくなりました。 ナイアンティックはこのScaniverseアプリと地図を組み合わせ、ユーザーがスキャンして取り込んだ現実世界の彫像や建造物を地図上に配置してゆくことで、人海戦術で現実のデジタル化を進める戦略です。 ポケモンGOでポケストップの周囲を撮影するタスクがあったのも、多数のユーザーにゲーム上の報酬を与えて世界を少しずつデジタルに複製するための試みでした。 ■ 独自の広範囲スキャナPhotonで公園を取り込み。VPSも提供 アプリの Scaniverse は細かな点も驚くほどリアルにスキャンしてデジタル化できますが、スマホを手に持って、対象をあらゆる角度から舐めるように撮る必要があるため、あまり広い範囲を取り込むのは現実的ではありません。 また一般ユーザーにとって、特徴のあるオブジェや小さな施設はともかく、公園の野原のような広い空間をスキャンして回る動機も考えづらいところです。 そこでナイアンティックは、独自の広範囲スキャナ「Photon」を開発。今回の明治公園とのパートナーシップでは、このPhotonで公園の広い範囲をスキャンして、精緻なデジタル版の複製を生成します。 Photonによるスキャンも含め、明治公園を様々な方法でデータ化し、自社の開発プラットフォームを通じて開発者に提供することで、たとえば公園内の施設や地形にピタリとあわせて自然にデジタルのキャラクターが現れたり、公園内の特定の位置にAR体験を配置するといったことが可能になる見込みです。 ■ 具体的には全部これから 提供するAR体験には「Niantic PARK」と名前がついており、現実の明治公園と重なって存在する、常設型のデジタルテーマーパークのようなものとの説明もありますが、具体的にはまだこれから。 公園のスキャンも年内予定とされており、いまのところスマホを持って訪れてもなにか特別な体験ができるわけではありません。 ナイアンティックの既存ゲームである『Ingress』『ポケモンGO』『ピクミン ブルーム』『Peridot』『モンスターハンターNow』を通じた体験も提供予定としていますが、こちらもまだ特別なAR体験などはなく、ゲーム内でポータルやポケストップといったポイントになるWayspot の配置が増えたり、絵柄が変わるといった程度から始まります。 ■ パートナーシップ is 何 発表文や記者説明では、パートナーシップの内容は「都立明治公園に特別なAR体験を提供」「ARの未来をもたらす」等とされているだけで、具体的な内容はいまひとつ分からず、あるいは公園の3Dスキャンにあたってパートナーシップが必要なのか等もよく分かりません。 ナイアンティックに訊いてみたところ、パートナーシップはナイアンティックがAR体験を提供し、公園側も正式な企画として扱いお互いにプロモーション協力することで、公園の魅力を高め多くの来園者が訪れることを狙った内容。 スキャンについては、明治公園ではパートナーシップに基づき公園側の協力があるものの、(公共の場所であるかぎり)必ずしも特別な許諾やパートナーシップは必要ないとの考えでした。 いわゆるデジタルツイン的なスキャンを進めるにあたって、どうやって点を増やしてゆくのか、点と点をつなぐのか、面を押さえるのかは各社が様々な取り組みを通じて競争していますが、今後あらたなAR機器やアプリが展開してゆくにあたって、ナイアンティックとパートナーシップを結んだ公園なり施設でないと使えない、ということにはならないようです。
TechnoEdge Ittousai