二大政党制にこだわるよりも……“古いスマホで新しいアプリ”使う私たち
新しい時代に合った新しいモデルの構築を
本当の問題は国民と政治のシンクロ率の低さです。国民と政治がシンクロしないことによって、国民の意思に関わらず、制度によって政治が勝手に動いてしまいます。また、官僚機構にも政治のコントロールが効かずに、一度決めた計画が必要なくなっても組織の論理が優先して遂行してしまうといった暴走の可能性をもたらします。 選挙戦の中で、「リセット」とか「改憲」とか「消費税の使いみち」といった単語がでましたが、社会のコミュニケーションが危機的な状況であることについてどの政党からも言及はありませんでした。しかし、立憲民主党が追い上げに成功した大きな要因の一つは、あなたの党ですとボトムアップ指向を打ち出したことにあると私は思います。 私は、現状の政党の機能の発展が期待できない中で、中身のない二大政党制を追い求めるより、もっと現実的に状況を捉え、多党制の中で一つひとつの政策課題について、私たちが学びながら合意形成を進める「コミュニケーションモデル」を作ることのほうが重要であると考えています。そして、このモデルは、いままでの要素だけでは構築できないと考えた方がいいでしょう。枠を超える、out-of-the-box(革新的)な発想が必要です。 現在の私たちの社会は、次の社会のモデルを見つけられず、例えるなら、古いスマホで新しいアプリを動かそうとしてフリーズしているような奇妙な膠着状態にあります。これはかつて自民党が強すぎた時代の閉塞感にも似ています。 1990年代の選挙制度改革によってもたらされた現在の制度は当時の30~40代の先人たちが構築したものです。それらの改革は、2009年の民主党政権が誕生し、自民党が野党になるという一定の成果はみましたが、民主党政権の失敗とその後の政治不信などの影響もあり、必ずしも十分に機能しているとはいえません。もとより、世界の政治情勢は急速に変化しており、インターネットの普及をはじめテクノロジー面も含め時代を取り巻く環境は激変しています。 そろそろ、私たちの世代で、政治と国民の意思をよりシンクロさせていくための次のモデルを考えませんか。
----------------------------- ■岩田崇(いわた・たかし) 1973年1月生まれ。「オープンな合意形成によってこれからの社会に求められるイノベーションが実現する」との考えのもとに特許、メディア開発などを行う研究者、起業家。栃木県塩谷町では『塩谷町民全員会議』を開発、運営し、2016年マニフェスト大賞コミュニケーション最優秀賞を受賞。サイト