祭り継承に苦悩する限界集落:しきたりを守って絶えゆくか、変えて残すか?
先祖代々のしきたりを守って氏子だけ、地元住民だけでの開催にこだわる祭りは多いが、それでは立ち行かないと、行政が支援する例もある。福岡県は2023年に「地域伝統行事お助け隊」を創設。祭りに参加したい人を募って担い手不足の地域とつないでいる。
2番目は、移住者が担い手となった例だ。 宮崎県串間市の市木地区は300年前から旧暦8月15日夜の火祭りを恒例としてきたが、高齢化により一時期は存続が危ぶまれた。「市木古式十五夜柱松神事」として復興に努めたのが、日南海岸の波を目当てに移住したサーファーたちだ。よそ者扱いされがちな移住者が主体となって伝統の灯を守り、祭りを通じて地域に溶け込んでいる。
少子化に伴い女子に門戸を開く
3番目は、男女の垣根を取り払った祭りだ。 愛知県奥三河地方の14地区で700年前から伝わる湯立神楽「花祭」は、真夜中に稚児が演じる「花の舞」から始まる。日本の祭りでは神が降りるとされる稚児は「10歳未満の男子」と決まっていることが多く、花の舞も地元に住む幼少の長男のみに任せてきた。だが東栄町御園地区は34世帯のみで、20年以上も前から地域外の子を参加させている。そんな折、御園で十数年ぶりに子どもが生まれた。双子の女の子だったが、4歳で稚児デビューさせて見物客のアイドルになった。今では花の舞は男女混合である。
愛知県松山市の北条地区伝統の「鹿島の櫂(かい)練り」は平安末期の水軍(海賊)の戦勝祈願をルーツとする。海の男の船祭りだけに、船首で舞う櫂振り役は氏子の男児に限ってきた。ところが2023年、希望者なしで休止の危機に陥り、祭典委員長は悩んだ末に自分の娘2人を出場させた。「自分が大きく伝統を変えた。これで良いのか…」と自問したが、翌年も少女たちが舞って観客を沸かせた。
一方、女人禁制を貫く選択をしたのが、長崎市高浜町で200年以上続く神事相撲「高浜八幡神社秋季大祭」である。小学生以下の男子による33番の奉納相撲から始まるのだが、2018年には人数が足りなくなった。神事の後の相撲大会には女性も出場していたので、高浜相撲協会は33番相撲への女子参加を協議。議論を重ねた末、「まだその時期ではない」と男子の数に合わせて取り組みを減らすことにしたのだ。