消えぬ地デジ難民(下) 災害発生時の情報源 町の補助で賄いきれず インターネットの光テレビ視聴への切り替え検討も「テレビ視聴を諦める住民が出てくる可能性がある」
地上デジタルテレビの難視聴地域に該当する埼玉県小鹿野町三山河原沢、藤倉、上薄、小森の4地区住民らの要望を受けて、同町は2023年度以降、「地上デジタルテレビ対策事業費」を予算に盛り込んだ。毎年約100万円の赤字運営が続いている4地区のような自主共聴組合の運営費を軽減するため、町が辺地共聴施設の維持管理に要する電柱共架料やケーブル移設費などの一部を補助する。23年度の事業費は約200万円だった。 消えぬ地デジ難民(上) 自主運営の組合、大幅赤字に苦慮 移行から約14年、山間地などにはいまだに「地デジ難民」存在 「高齢者は地上波放送が日常の情報源であり、娯楽」
町総合政策課によると、15年調査時で、町内の地デジ難視聴域は人口約1万人の25%ほどに当たる1200世帯で、東京電力の受信施設の運営を引き継いだ「自主共聴」の組合は4団体、NHKと地元組合が共同で運用している「NHK共聴」の組合は13団体あった。24年12月現在も、難視聴域の世帯数や組合数は大きく変わっていないという。 町は町民にテレビを視聴させる義務がないため、同課の担当者は「町内のテレビ共同受信組合の数や、運営状況を把握しきれていないのが現状。テレビは災害情報などの貴重な収集源になっているので、自主共聴の運営者にはできる限り協力したいが、地デジ対策は国が絡む大規模な事案のため、小さな自治体がどこまで関与するべきかの線引きに戸惑っている」と説明する。 藤倉地区テレビ共同受信組合事務局の強矢範夫さん(69)は「町の支援はありがたいが、4組合が財政正常化を図るには、この補助金では賄いきれないのが現状。インターネットの光テレビ視聴への切り替えも検討しているが、接続料やプロバイダー料などを含めて1世帯月額6千円以上かかるため、テレビ視聴を諦める住民が出てくる可能性がある」と不安を口にする。
総務省によると、自主共聴施設を運営している組合は23年6月時点で全国に約9700施設。22年以降に実施した「辺地共聴施設の現状などに係るアンケート調査」によると、全国の自主共聴組合員らが挙げた運営に関する課題は、「設備の老朽化」が全体の43%、「組合員数の減少」は51%を占めている。 総務省は23年度以降、「辺地共聴施設整備支援事業」を実施。災害時などの情報伝達を確保する目的で、難視聴地域でのネットワークの光通信化、送受信設備などの整備を行う事業費用の一部を国が補助している。24年12月時点で交付が決まった組合は北海道の4施設のみ。事業の認知度や要件の厳しさが課題に挙げられている。 総務省地域放送推進室は、共聴組合員らの疑問や悩みに応じる「辺地共聴施設相談支援窓口」を開設。同室の担当者は「小鹿野町のように組合員と町職員が連携して難視聴解消に取り組んでいる自治体は、全国でも希少。自主共聴の運営で悩んでいる方は、組合内で抱え込まず、国などに相談してほしい」と呼びかけている。
同支援窓口の電話相談は(電話080・3716・0444、電話080・3526・4283)へ。受付時間は平日午前9時から午後5時。
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