“ヘビキャラ”が根強い人気を誇る理由とは? 『ONE PIECE』から『〈物語〉シリーズ』まで
『鬼滅の刃』伊黒小芭内&『〈物語〉シリーズ』千石撫子の魅力
●『鬼滅の刃』伊黒小芭内 『鬼滅の刃』に登場する伊黒小芭内は、鬼殺隊において“蛇柱”の称号を持つキャラクター。その理由は独自に編み出した「蛇の呼吸」にある。うねった形状の日輪刀から繰り出される太刀筋は、まさしくヘビのように変幻自在だ。 いつも首に巻き付けている相棒の白蛇・鏑丸もインパクトが強いが、戦闘スタイルや見た目だけでなく、内面に関してもヘビっぽいところがある。というのも、原作コミック版では、伊黒は会話シーンで「ネチネチ」という擬音がつけられるほど、粘着質な気質をしているからだ。 またTVアニメ第4期『鬼滅の刃 柱稽古編』では、そうした性格が如実に表現される場面があった。伊黒は恋柱・甘露寺蜜璃に特別な感情を抱いているため、炭治郎が甘露寺と仲良くしていることを知り、激しく嫉妬心を燃やす。そして炭治郎が自分のもとへ稽古にやってくると、敵対心をあらわに威嚇するのだ。ちなみに作者が意識していたかどうかは分からないが、ヘビは「七つの大罪」において“嫉妬”を象徴する動物とされている。 ●『〈物語〉シリーズ』千石撫子 他方でアニメファンにとって馴染み深いキャラクターといえば、『化物語』から始まる『〈物語〉シリーズ』のヒロイン・千石撫子だ。元々彼女は平凡に生きていた大人しい少女だったが、恋愛のいざこざに巻き込まれるかたちでヘビの呪いを身に受けてしまい、運命が大きく変わっていく。 主人公・阿良々木暦や怪異の専門家・忍野メメによる協力によって呪いからは解放された撫子だったが、その後『〈物語〉シリーズ セカンドシーズン』の『囮物語』から激動の展開に突入。黒幕的存在の忍野扇や北白蛇神社の神・クチナワに唆されてご神体の札を飲み込み、白く輝く“蛇神”に成るのだった。 蛇神化した撫子は、普段の温厚であざといキャラクターから一転して傲慢かつ甘ったれた性格になるのだが、声優・花澤香菜の熱演も相まって、その変貌に度肝を抜かれてしまった視聴者は多かったのではないだろうか。 ●なぜヘビをモチーフとしたキャラクターは多くの人を魅了するのか 今回は4つのアニメに登場するキャラクターたちを取り上げてきたが、いずれも作中で独特の存在感を発揮していることが共通点として挙げられる。そのため一番人気ではないにしろ、一部のファンから熱烈に愛されている印象だ。 たとえばハンコックは、2021年に発表された「第1回 ONE PIECEキャラクター世界人気投票」で7位という高順位を獲得。大蛇丸も2023年発表の全世界キャラクター人気投票「NARUTOP99」で全488キャラ中23位と善戦しており、伊黒は『週刊少年ジャンプ』誌上で行われた『鬼滅の刃』第2回人気投票で8位につけていた。そして撫子は言うまでもなく当時大ブームを呼んだ人気キャラであり、花澤の名が広く知られるきっかけとなった。 なぜヘビをモチーフとしたキャラクターが多くの人を魅了するのか。その理由を考えると、「尖ったキャラを作りやすい」という点が挙げられるかもしれない。ヘビは神話や昔話の頃から寓意的な存在として扱われてきたため、膨大なイメージの積み重ねがある。そのため既存のイメージを上手く活用することで、個性的な人物造型を作り出せるというわけだ。 2025年は巳年にあやかって、ヘビにちなんだキャラクターにフォーカスが当たることを期待したいところ。もしかすると未曽有の“ヘビキャラ”ブームが起きるかも……というのは、さすがに多くを望みすぎだろうか。
キットゥン希美