【特集】「令和の米騒動」その後 品不足落ち着き価格高続く 専門家の分析は 岩手
TVIテレビ岩手
特集です。ことし、日本全国を巻き込んだ米の品不足は、「令和の米騒動」と呼ばれました。新米が出回り、品不足は落ち着きましたが、今度は米の価格が高騰しています。米の流通に何が起きているのか、専門家の分析を交えて取材しました。 米はある。なのに…高い。 佐々木米穀店「価格を安くすることがなかなかできないっていう」 米を巡る異例の状態が今も全国で続いています。 小川助教「例年とは違うお米の動き、卸しや流通業者の動き」 2024年の夏。全国の店から米が消えました。「令和の米騒動」と言われたこの現象は、今年の流行語になるほど話題になりました。消費者の危機意識が拍車をかけました。 佐々木米穀店 佐々木尚人専務取締役 「お米が無いということで、とりあえず量を確保するということでお客さまが購入されていきましたね。それで最終的にお店の中がすっからかんになってしまったっていう感じです」 収穫の秋。岩手の米の作柄は106の「良」、24年ぶりの豊作と予想されています。 米の販売店では9月末にやっと新米を入荷でき、品不足は解消されました。 しかし。 佐々木さん 「価格がですね、だいたい10キロあたり1500円から2000円以上は値上がりしていまして、お客さま的にはですね『急に高くなった』という印象がかなりあると思いますね」 特に9月以降、全国で米の価格が高騰。10月の平均小売価格は、盛岡が去年の同じ時期のおよそ1.4倍。東京は1.7倍で、統計をとり始めてから最も大きな上げ幅となりました。 米の流通を研究している宇都宮大学の小川真如助教は、小売店の動きが価格高騰に結びついていると分析しています。 宇都宮大学農学部 小川真如助教 「この夏、都市部を中心にスーパーでお米が無くなるという状況が起きたというところで、小売店の中には『価格はいいからとにかく米を持ってきてくれ』という、高くてもいいから持ってきてくれと、かなり過熱した状況があったということですね。お米が確保できたか確保できなかったかというのは、今年だけじゃなくて来年以降の取引の信用性につながるわけです。そこはちょっと今回は無理をしてでも高値で米を集めに行くと、こういう心理が働いているのではないかと見ています」 1993年 「ことし、岩手に夏の訪れはありませんでした…」 31年前の「平成の米騒動」は、冷害で米が記録的な凶作になり、米の価格が吊り上がりました。 一方、今回の価格高騰は、十分な量が確保できている中、高値での大量買い付けが原因になっていると専門家は見ています。 こうした中、JAが生産者に渡す「概算金」もことしは異例の状態となり、県内産のひとめぼれは1万9000円、銀河のしずくは1万9500円など、どの銘柄も去年の1.5倍以上となっています。 しかし、収入が増える米農家の思いは複雑です。 森岡誠さん 「ここ2,3年は肥料・農薬が全てがどんと上がっちゃって、利益が薄くなってきた。そういうことから比べると今回の状況は非常に助かっている。いい状況にはなっていると思います。将来を見据えた時には(値段が)あまり上がりすぎるというのはやっぱり米離れが出てくるということで、不安要素も残る」 募る危機感。11月、JA全農いわてなど生産・流通の関係者が集まり、米の価格をどうしたら安定させられるか、話し合いました。例年は年2回の会議ですが、ことしは今回が3回目で、これまた異例の対応です。 JA全農いわて米穀部 杉村靖部長 「どういうお客さまにどう販売されてどう価格転嫁されているのかわかんないんですけども、果たして来年それが同じようになるかっていう保証もないので、あんまり一喜一憂ではなくて、産地と消費者が納得する価格を折り合いのところで永続的に安定的に販売ができる環境が理想じゃないかなと思っています」 米の品不足は解消された今。消費者、生産者、小売店、誰もが今後の価格の動向に注目しています。