霞ヶ関ではなく外資系コンサルに就職する東大生たち。“東大卒”は「コスパ」の良い自己投資なのか?東大学費値上げ問題を考える
福沢諭吉を踏襲?慶應塾長の提言の背景
――ちょっと前の話ですが、中央教育審議会の特別部会で慶應塾長の伊藤公平さんが「国公立大の学費を年150万円に上げるべきだ」と提言して物議を醸しました。しかし、尾原さんの『「反・東大」の思想史』第一章を読むと福沢諭吉が似たような主旨のことを言っているのに驚きました。 尾原:明治日本がいち早く近代化を達成するためには、急速に人材を育てる必要がありました。そこで、東大などの国立学校を設け、多額の国費を投入したわけです。しかし、日本には慶應義塾をはじめとする私学がすでに存在していました。政府には、多様な私学の成長を支援するという選択肢もあり得ましたが、それは非常に時間のかかることです。結局、政府は自前で強大な国立学校を作ることを選びました。 結果として、東大をはじめとする国立学校は安い学費で充実した教育を提供し、人材が集中し、私学の発展は阻害されました。多様な学校が自由に競争し成長することを是とする福沢は、「民業圧迫」によって教育をモノトーンにした政府と国立学校を激しく批判します。そういう歴史を踏まえた上で、伊藤塾長はあのように言われたのだと思います。 最初に申し上げた通り、「誰でも自由に学問できる社会が望ましい」というのはその通りだと思いますが、「国家が学費の安い強大な大学を作ってエリートを養成する」以外にもいろいろな可能性はあり得ます。福沢をはじめ、これまで蓄積されてきた議論をあらためて振り返り、あるべき大学教育のかたちを議論し直すべきだと思います。 尾原 宏之 甲南大学法学部 教授
尾原 宏之
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