ヨウ素剤 配布3割 東海第2事故備え 茨城県、ネット申請へ
日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村白方)の過酷事故に備え、県が半径5キロ圏(PAZ)の住民を対象とする安定ヨウ素剤の配布率が10月末時点で、約3割にとどまることが分かった。配布率向上のため、県はオンライン申請を受けて自宅に郵送する「遠隔配布」を2025年3月に始める。県薬務課の担当者は「利便性を高め、率向上につなげたい」と話す。 安定ヨウ素剤は甲状腺の内部被ばくを予防・低減する効果がある医薬品。県は前回配布分の使用期限に合わせ、23年4月から新たな薬剤を「配布会」や協力薬局を通じ配っている。今年10月末までの1年半の配布率は同県東海、日立、那珂の3市村で33%で、4万人以上が受け取っていない。 配布率は低下傾向にある。15~17年度の配布分は53%、18~22年度の配布分は46%だった。同課担当者は、東京電力福島第1原発事故から13年以上が経過し「(備えへの)関心が薄れてきている可能性がある」とみる。 打開策として、スマートフォンなどデジタル端末から申し込める遠隔配布に着手する。開始予定は25年3月1日で、同2月下旬ごろに未配布者に申請用番号を通知する。 専用サイトでアレルギーや健康状態をチェック、薬剤の効果や注意点などの動画を視聴した上で、オンライン申請してもらう仕組みだ。時間や場所を問わずに申請でき、自宅で受け取れるのが利点。薬剤は1~2カ月で届くという。 県は国の原子力災害対策指針に基づき、配布に取り組んできた。対象はPAZの東海、日立、那珂の3市村の住民で、独自配布の同県ひたちなか市を除く。初年度の15年度から行っている配布会、22年度に始めた協力薬局での配布は今後も継続して実施する。 同課担当者は「万が一の事故に備え、手元に置いてほしい」と呼びかける。
茨城新聞社