「サイコパス」の冷徹さは何らかの役に立つのか 「うまく機能しているサイコパス」に向いた仕事
その一方で、耐え難い道徳的選択に絶えず直面する人が、思いやりを無視して現実的な費用便益に焦点を合わせられることを、心強く感じる人もいる。 問題は、精神病質の指導者が、自分にとっての費用便益だけを考慮に入れるのか、それとも、他者のことも考えるのか、だ。 ■サイコパスは出世するが有能ではない 幸い、これらの疑問は検証することができる。冷徹で計算高い脳は、そうでない脳よりも性能が良いのか? 共感の束縛を解かれることは、1つの才能なのか?
ブリティッシュ・コロンビア大学のリーン・テン・ブリンク教授が私に語ってくれたように、証拠はそうではないことを示している。 「サイコパスは、魅力的でカリスマ性を持っているように見えるので、出世します。ところが、精神病質的な特性をあまり持っていない人ほど有能ではありません」 テン・ブリンクは選挙で選ばれた議員の調査を行った。すると、驚くべきことがわかった。 ダークトライアドの傾向が強い人のほうが、もっと正常な脳の人よりも再選されやすいが、法案を成立させるのが下手だった。彼らは投票者を説得して自分に権力を与えさせたが、その権力を効果的に使えなかった。
だとすれば、ダークトライアドは社会にとって二重の意味で有害だ。ダークトライアドのせいで、権力を濫用する人が出世するが、その後は期待外れの働きしかしないからだ。 テン・ブリンクは、101人のヘッジファンド・マネジャーの調査も行った。ヘッジファンド・マネジャーのプロとしての腕前は、彼らのあげる投資収益によって簡単に測定できる。 経済成長が続いている時期にたまたま運に恵まれた人を選んでしまうのを避けるために、この調査では2005~2015年の10年間にわたる成績を調べた。
すると、精神病質が強いほど、成績が悪いことがわかった。それは、ダークトライアドの特性を持つ人は衝動的である度合いが高く、無謀な冒険をするから、というのが1つの説明になる。 サイコパスは、自分が他の人々よりも利口だと考えている。彼らは私たち同様、リスクを求めるが、そのツケを払わずに済ませられることを見込んでいる。ツケが回ってくるのは愚か者たちだ、と思っている。 だから、精神病質のヘッジファンド・マネジャーは慎重さなど持ち合わせていない。一か八かの賭けをする。そして、ときおり大損する。