『くまのパディントン』のモデル!? メガネグマは南米唯一のクマで驚きの「超怪力」!
『くまのパディントン』のモデル!? メガネグマは南米唯一のクマで驚きの「超怪力」!
南米に生息するクマは、丸い目をした黒いメガネグマだけだ。クマとしては小型だが、成獣は重さ100キロを超すこともあり、力は恐ろしく強い。牛の死骸を高さ20メートルの樹上に引き上げることもある。ほかのクマに取られないよう、樹冠に隠しておくためだ。 けれども、子どもの頃に祖母がケチュア語(ペルーの公用語)で世の中のことを話してくれたときには、ウクク(ケチュア語でクマ)という言葉は、動物というより、何かはかない存在のように響いた。私(生物学者のルースメリー・ピルコ・ワルカヤ)にとっては、村にいる犬や鶏、食用に飼われているモルモットが動物だった。 ギャラリー:大迫力!のグリズリー百面相 ケチュアの物語でウククは必ずしも神聖視されているわけではないが、人間との関わりは神秘的なもので、私たちは今でもその関わりを大事にしている。ウククはアンデスの氷河の守り手で、時々村の女性を花嫁として連れ去るという。クマと人間の間に生まれた子どもたちが、最も高い山頂から氷河の氷を運び出し、村に水をもたらすというのだ。 私とクマとのつながり? うまく説明できないが、クマは私の前に現れ続けた。いや、実際に現れたわけではないが、ずっと心に引っかかっていて、人生のいろいろな場面で顔を出したのだ。 町の中学校にはビデオデッキがあり、私が14歳ぐらいの頃、誰かがディズニーのアニメ映画『ブラザー・ベア』の吹き替え版をデッキで再生した。アラスカを舞台に、クマ、人間、精霊が心を通わす物語だ。それを見ているうちに、私の中で何かが動いた。 何か強い結びつき、自分とクマとのつながりをはっきりと感じた。今でも覚えている。心の中で叫んだことを。「私はクマとつながっている、クマになりたい」 私は誰にもそのことを言わずに、心の奥にしまい込んでいた。だが、ペルーの都市クスコの国立大学に進んでからも、クマとの絆に対する確信は変わらなかった。 生物学への関心が高じて、英国ロンドンのキュー王立植物園で保全調査に携わることになったとき、同僚たちは私の出身地を知ると、うなずいてこう言った。「ああ、くまのパディントンね!」と。 児童書の『くまのパディントン』シリーズの主人公は古い帽子をかぶって英国にやって来たクマで、出身地は「暗黒の地ペルー」ということになっている。だとすれば、このクマはメガネグマということだ。 ※ナショナルジオグラフィック10月号特集「アマゾンに注ぐ「空を飛ぶ川」」より抜粋。
話=ルースメリー・ピルコ・ワルカヤ(生物学者)/聞き手=シンシア・ゴーニー(ジャーナリスト)