いまや軽自動車にも付いてるのにナゼ? トヨタの人気車種「シエンタ」が「便利かつ安全」な電動パーキングブレーキを採用しないワケ
次期モデルに装着されるはず
では、すでに電動パーキングブレーキが全盛となっていた2022年8月に発売された3代目現行シエンタに、電動パーキングブレーキが採用されなかった理由はなんだろう。 ひとつ目は間違いなくコストだろう。シエンタの価格は実質的なエントリーモデルが7人乗りのX 2WD(3気筒のガソリン車)で203.52万円というリーズナブルな価格でスタートしている。ファミリーカーとしての需要中心のシエンタにとってスタート価格設定は重要で(結果的に上級のG、300万円オーバーのハイブリットZの7人乗りを買ったとしても)、それを実現するためにも電動パーキングブレーキの採用を思いとどめたと考えられる。 なお、新型フリードのガソリン車の価格はエアーで250.8万円~。2列シートのクロスターが281.27万円~になる。 つぎにユーザビリティである。先代シエンタも大ヒット作であり、多くのユーザーに愛されていたわけで、足踏み式パーキングブレーキ採用の2代目から3代目に乗り換えるユーザーに、パーキングブレーキの作動について違和感を与えたくない……という配慮も、それが正しいかはともかく、あったと思われる。 そし3つ目が、2020年夏にデビューした3代目シエンタの開発期間では、フリードも電子パーキングブレーキ不採用の長寿な2代目(2016~2024年)だったわけで、フリードを横目で見れば、コストやユーザビリティを含め、電子パーキングブレーキは不要……という判断が下されたのかも知れない。実際、3代目シエンタがデビューした2022年8月から、新型フリードが発売される2024年7月までの約2年間は、両車ともに電動パーキングブレーキ’’不採用同士’’だったのである。 とはいえ、新型フリードが驚異の乗り心地のよさや車内の静粛性の高さに加え、電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能、そして極めつけのリヤクーラーを採用するなど、優位性を示し、商品力(シエンタにない2列目キャプテンシートの選択肢も!)を大幅に高めたことから、次期型シエンタの開発に一層熱が入ることは間違いないところ。 ドライバーの高齢化が進み、シエンタは女性ドライバーにも愛され続けていることから、足踏み式パーキングブレーキは、操作に足の力が必要となるデメリット(パーキングブレーキをかける、解除する2度の踏み込み操作が必要)もあって、電動パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能の追加は急務といっていい。 しかし、この機能をモデルライフ途中に追加するのは難しい。 よって、コストにもこだわった4代目となる新型の登場が早まりそうな予感がしている。そもそも、Zグレードのエレクトロシフトマチックと前時代的足踏み式パーキングブレーキの組み合わせは大いに違和感があるわけで……。
青山尚暉