【40代、50代・薬と上手に付き合う方法⑥】薬で依存症になることがある!?
依存性のある薬は医師とよく相談して!
抗うつ剤や睡眠薬には依存性が認められるものもある。 厚生労働省の調査によると、うつ病や双極性障害などの気分障害を患っている人は、2017年には120万人を超えている。この数字は年々増える傾向だ。 「こうした気分障害の人が心療内科などに行って、よく処方される薬に催眠鎮静薬や抗不安薬があります。これらに含まれるのが、短時間で強く作用するベンゾジアゼピン系です。 脳には気分を鎮静させるGABAという神経の信号を伝達する物質があります。この成分はそのGABAと同じような作用をすることで、脳の興奮を抑え、不安や緊張を緩和して、不眠などを改善する薬です。 安全な薬として使われていますが、ベンゾジアゼピン系にはアルコールと同じように脳の報酬系に作用して、短時間で強力な効果があります。そのため、薬の効果が切れると、イライラしたり怒りっぽくなったり、薬を止めるのが不安になるなどの依存症のような症状や認知機能の低下などが起こることが指摘されています。これを常用量依存といいます。 とはいえ、気分障害は自殺の原因のひとつになっているので、治療の必要性が上回れば薬の投与は必要でしょう。自分で勝手にやめるのがいちばん危険なので、適切な量を適切なタイミングで使用することが何より大事です。主治医との十分な相談を! 睡眠を促す薬としては、最近ではオレキシン受容体拮抗薬があります。脳内にはオレキシンという覚醒に携わる神経伝達物質があり、その受容体を遮断することで眠気を促すのです。これには依存性がベンゾジアゼピン系より少なく、自然な睡眠を促すといわれています」 やはり、薬は依存するのではなく、かといって怖がるでもなく、そのメリットとデメリットを知ったうえで、上手に付き合っていくことが重要だ。
【教えてくれたのは】 鈴木素邦さん 経営学修士(MBA)。「クラヤコンサルティング」代表取締役。城西大学薬学部非常勤講師。東京大学や慶応義塾大学などの教壇に立ち、多くの薬剤師を世に送り出す。薬局薬剤師の経験、多くの薬剤師を輩出した経験をもとに、お客様第一の薬局になれるような薬局向け経営コンサルティングを行う。研修講師としても、薬局経営者向け中心に講座を実施している。著書に『薬の裏側』(総合法令出版)など。 イラスト/いいあい 取材・原文/山村浩子