地震発生10時間後に元気な産声…『井戸水』で医療機能維持した七尾の病院 過去の大災害教訓に“水の備え”
ただ、恵寿総合病院にある3棟のうち井戸水が活用できるのは新館のみで、多くの水が必要な透析治療も、断水の影響で一時治療できない状態に追い込まれた。 神野理事長: 「残念ながらここには井戸水の配管がなかったので、給水でお願いしている水を、1日15トン以上を使っています」
自衛隊による給水が始まったため、1月6日から透析治療は再開した。透析治療を行う病棟には、2月になっても給水車が毎日30トンもの水を補っている。
■名古屋市で井戸水を確保している医療機関は約3割程度 古い建物の病院には別の課題も
被災地の医療現場にとって水は、なくてはならない「命綱」だ。南海トラフ巨大地震が懸念される東海地方の医療機関でも、対策がすすんでいる。 名古屋市中川区の掖済会病院は南海トラフ地震発生時に、病院の一帯で浸水や液状化被害が想定されていて、建物の免震化や予備電力の確保など、様々な対策を進めてきた。
災害拠点病院であるこの病院の敷地には、井戸水をくみ上げる施設がある。県からの補助金を使って、10年前に井戸を堀り起こした。 名古屋掖済会病院の熊谷寛明医師: 「東日本の震災以降に教訓として、災害時に水が使えるように井戸をひいた。(井戸への配管が)地下に真っすぐ掘っていて、地震に対して通常よりも強いといわれている」
井戸からくみ上げた水は、地上に設置したろ過装置で砂や細菌などを取り除いた後、水道水と混ぜ合わせて院内で利用している。井戸水は毎時10トンの供給ができるため、平時であれば1日の医療体制を十分賄えるとしている。
しかし、この病院でも『課題』がある。40年前に建てられた古い病棟には井戸水が供給できないため、災害時には手術などができない可能性がある。 熊谷医師: 「古い建物に井戸水の配管をつなげることができなかったんですけど、今後造る新しい建物は、井戸水を使えるような対策をしていく」
名古屋市によると、市内で井戸水を確保している病床がある医療機関は57カ所で、東日本大震災から、井戸を掘り起こす病院が増えているというが、全体の3割ほどと、まだまだ十分とはいえない状況だ。