「挨拶されて犯罪を思いとどまった」 負の方向へ向かわせる”孤独感”を解消する声かけ
厚生労働省から「新しい生活様式」としてマスク着用のルールが緩和されるなど、日常生活に少しずつ変化が生まれています。一方、雑踏に対する苦手意識が芽生えたり、至近距離での会話を避けることに慣れたりして、人と人とのコミュニケーションが減ったと感じることも少なくありません。つい先月、川越市でインターネットカフェの立てこもり事件が発生しましたが、容疑者は「刑務所に戻りたかった」、「人生に嫌気がさした」と述べているとも伝えられています。そのような状況について、犯罪心理学者の出口保行さんは「人間関係が希薄化することで孤独を感じ、負の方向に向かってしまう危険性がある」と話しています。社会生活に対する閉塞感や、対人コミュニケーションの大切さについて話を聞きました。(Yahoo!ニュース Voice)
今は無意識にコミュニケーションを避けている 負の方向に陥る危険性
――今でも無意識のうちに、人との直接的なコミュニケーションを避けるようになったと感じます。これにはどのような影響があるのでしょうか。 出口保行: 人との接点が必要以上に減ることで、人は強い閉塞感と孤独を感じます。そして社会から隔離されていると感じてしまい、その中で考え方が極端に負の方向に向かうことがあります。 例えば、自分が生きている意味や価値観を肯定することが難しくなり「こういった状況に陥ったのは社会が悪い」と社会に責任を押し付けるタイプの人間も出てきます。そうなると社会にいる人々を巻き添えにして事件を起こし、周りを全部道連れにして死んでいこうとする“拡大自殺”という現象にもつながります。 昨年から発生している小田急線内で起きた傷害事件、京王線内で起きた傷害事件、大阪のクリニックで起きた事件など、無差別テロ的な事件が頻発していることも、こうした閉塞感が強い中でのコミュニケーション不足等が大きく影を落としている可能性があります。世の中への不満がたまりやすくなり、ネガティブな考え方に陥ったり、ストレスを感じたり、それが社会全般に対する敵意につながって、最終的には犯罪につながるトリガーになっているとも考えられます。