「挨拶されて犯罪を思いとどまった」 負の方向へ向かわせる”孤独感”を解消する声かけ
「こんにちは」で集団への帰属意識を
――「挨拶」をどのように日常生活に取り入れていったらよいでしょうか。 出口保行: 例えば皆さんは、マンション内ですれ違う人やご近所さんと、挨拶ができていますでしょうか。どんな簡単な一言であったとしても、挨拶をちゃんとしてくれる人に対して好感を持つと思います。それは自分に少なからず関心を持ってもらえていることの証だからです。このように身近な生活に挨拶を取り入れて人とのつながりを持つことで、近隣住民が関心を持ち合い、自身の行動も変化して近隣トラブルなどの防止につながることもあります。相手や自分に関心を持っている人が世の中にいると思えるだけで、その後の行動が変化します。 挨拶運動は全国で展開されていますが、これは単にマナーの話ではなく、孤独から解放され集団への帰属意識を持たせる点でとても大きな効果があります。集団への帰属意識は人間には大事なことなのです。人は一人で生きていけるわけではなくて集団に所属して、初めて生きているという実感を持てるわけです。 挨拶一つで、相手や自分の心のケアにも結果としてつながっていくので、一方的なコミュニケーションではなくて双方の気持ちのやり取りが、社会全体を良くするのではないかと私は考えています。 ------ 出口保行(でぐち やすゆき) 犯罪心理学者 東京未来大学教授 こども心理学部長。神奈川県横浜市出身。法務省の心理職として刑務所や少年鑑別所で1万人以上の犯罪者を心理分析。内閣府、法務省、警視庁、各都道府県庁、各都道府県警察本部等の主催する講演会における実績多数。「攻める防犯」という独自の防犯理論を展開。各局報道・情報番組において犯罪解説等を行っている。今年の8月に著書『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(SB新書)を出版