【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】観た人同士でしか共有できない感動とまた観たくなるやみつき感があります『動物界』
TV『王様のブランチ』で2001年から映画コメンテーターとして出演するほか、マルチに活躍されているLiLiCoさん。これまでも数々の映画をナビゲートしてきたLiLiCoさんに、「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画について語っていただきます。 【全ての画像】『動物界』『レッド・ワン』
突拍子もないような設定に見えて、すんなり受け入れられる世界観の構築にびっくり
今回は先週から公開が始まった作品を紹介します。まずは、今年観た映画の中でもずば抜けてよかった『動物界』。フランスの異色SFスリラーです。 近未来、人間のからだが動物に変わっていくという原因不明の突然変異が起こります。最初はからだの一部、それがだんだん全身に広がっていき、その過程で凶暴化するといわれており、変異が始まった人々は施設に隔離されていました。 妻にその変異の兆候が見られたフランソワと息子のエミールは、彼女を施設に預けることを決めたものの、その移送中に事故が発生。変異した人々が逃走します。行方不明となった妻を探すフランソワとエミールでしたが、エミールのからだにも変異の兆候が……。 いやー、びっくりした! タイトルからしてなんだこりゃ、だったんですが、観て納得しましたし、この手の映画がフランスから出てくるとは思わなかったので意外性も含めて大好きになりました。これをハリウッドで作ったとしたら、B級トンデモ映画になっていたかも。特によかったのがヨーロッパらしい湿度高めな脚本と、驚異の特殊メイクです。 動物に変わっていくことを恐怖と受け止める人もいれば、当事者たちは変異をむしろ「キャラクターに新しい要素が加わる」と受け止めていて、そのギャップは実社会で対話不足の人々が抱える分断を見ているよう。突拍子もないような設定に見えて、すんなり受け入れられる世界観の構築にびっくりです。 エミールが変異していく過程での心情の移り変わりが、どこかで観たことが……と思ったんですが2018年の『いぬやしき』! また、鳥に変わっていく人が出てくるんですが、葛藤の末に変異を受け入れて飛べたときは涙が出ましたよ……。 この映画、観た人同士でしか共有できない感動があるのと、オチまで知っていてもまた観たくなるやみつき感があるんです。『侍タイムスリッパー』みたいに、観た人の口コミで広まっていくといいなぁ。久しぶりにすごいものを見せられた、と感じてもらえるはずです。