給食でつながる5道県 ろう学校がリモート交流 名物料理も献立に
給食を中心に北海道、茨城、愛知、島根、熊本の5道県のろう学校同士がつながるプロジェクトが、5年目を迎えた。参加校数から正五角形を指す「ペンタゴン給食」と名付けられたが、プロジェクト関係者は「さらに六、八、十角形と参加校を広げたい」と願う。 リモートでの借り物競争やジャンケン大会の様子 「みそカツが最高」「芋餅っておいしい」。17日、松江市の島根県立松江ろう学校の給食室に、手話と歓声が交錯した。幼稚部、小学部、中学部、高等部に在籍する計29人のうち、小学部以上の25人が一緒に食べる。 この日の献立は、島根産の麦ご飯と牛乳に、愛知のみそカツ、茨城のレンコン納豆あえ、熊本のタイピーエン、北海道の芋餅。おかずとデザートは交流校から送られてきたレシピなどを基に、校舎内にある給食調理室で作られた。6年生の安部隼人君がお代わりじゃんけんに勝って芋餅を皿に盛り付け、「うれしい」を笑顔と手話で表した。
このプロジェクトは、コロナ禍が世界に暗い影を落とし始めた2020年2月、「みんなで元気になろう」と愛知県立豊橋聾(ろう)学校の提案で始まった。 賛同したのは、松江ろう学校、北海道立旭川聾学校、熊本県立熊本聾学校、日本で初めて聴覚障害や視覚障害を入学条件にした筑波技術大学。リモートによるクイズ大会、じゃんけん大会、気象学習会などを定期的に行う他、各地の郷土料理を給食に出している。松江ろう学校が紹介した島根料理で人気が高いのは「うずめ飯」だ。 同校教諭の勝部淳さんは「聴覚に障害があると会話で得られる情報が少ないため、どうしても相手の気持ちに気付きにくくなる」と語り、「給食や交流会を通じて思いをきちんと伝え合う『気持ちの見える化』につながる」とプロジェクトの成果を見詰める。 将来どんな人になりたい?――。記者の質問に6年生の石橋優乃さんは「聞こえなくてもできる仕事をつくりたい」、5年生の青山心優さんは「お母さんと同じ病院関係で働きたい」と力強く返答した。
日本農業新聞