可能性大の教科「家庭科」の存在感が薄い理由 障壁となる「旧世代のジェンダー観」と「受験」
指導体制にも課題、非常勤が多く「家庭科は一人教科」
堀内氏は現在、高校の家庭科の教科書の執筆・編集に関わっている。 「家庭科は『家庭基礎』と『家庭総合』の2つの科目がありますが、1年で2単位となる『基礎』のみで終える高校が多いと思います。授業としては週に1度の2時間しかない場合がほとんどなのではないでしょうか」 限られた時間の中で、教えなければならないテーマは多岐にわたる。衣食住に関する内容のみならず、「自分・家族」「子ども」「高齢者」「社会福祉」「消費・経済」など、堀内氏が手がける教科書では、一生分の話題を10章に分けてまとめている。 「私たちの家庭生活の営みは社会に直結するものです。さらに世界的な課題にもつながるものだと意識できるように、『家庭科の授業を通じてSDGsを考えよう』というテーマで学習項目を分類するなどの工夫をしています」 家庭は社会の最小単位であり、家庭科を学ぶことは社会を学ぶことでもある。金融教育などの新分野が注目されがちだが、調理や被服の教育にも、時代の変化が表れている。今日では、型紙から服を作るようなノウハウよりも、大量生産される服を手入れして着るための知識や、正しく選んで購入するための消費者教育のほうが実用的だ。また、外国ルーツの子どもの増加や生活の多様化により、家庭の食事もプライバシーの一環として扱う必要が生じている。教員は、子どもが「学校で教わったことと違う、うちはおかしいのだろうか」と傷つくことのないよう、しかし生きるために役立つ知識を身に付けられるように進めなければならない。学校における体制で、改善すべき点はあるのだろうか。 「家庭科は非常勤の先生が担当することが多く、とくに小学校では、常勤の専科の教員が少ないのが現状です。『一人教科』なんて言われてしまうこともあり、家庭科教員が孤独に奮闘していても、教科としての取り組みが非常に見えづらくなっている。でも本来、家庭科の学びは家庭と連携をとってこそ深まるものです。そうした意味で、とくに小学校では、いつも子どもを見ている担任の先生が家庭科を担当するのが理想だと思います」