「65歳までに1,000万円」&「利回り4%の高配当株」のセットで“平均的な老後生活”を手に入れる方法【経済誌元編集長が解説】
65歳時点で1,000万円&配当利回り4%で平均的な老後は確保
毎月3万円の現金化を図るには年間36万円の株式の売却が必要になるが、この程度の切り売りなら、年間の値上がり益のほうが上回っており、当初の1,000万円の元本が目減りする可能性は低い。 1,000万円の元本が維持できれば、それ以降の年間配当金40万円も安定的に確保できる、という計算になる。しかも1,000万円の元本は死ぬまで失われることはない。老後生活にかかる金額例は以下の通りだ。 ●平均的な老後生活の場合 不足額(約6万円)=生活費(約28万円)-公的年金(22万円) ●ゆとりある老後生活の場合 不足額(約14万円)=生活費(約36万円)-公的年金(22万円) 平均的な生活でよいと考える場合、毎月約6万円が不足する。1年に換算すると6万円×12カ月=年間72万円の老後の準備資金が必要になる。 夫婦2人とも健康で65歳から20年間、つまり85歳まで生きるとすると、72万円×20年=1,440万円を準備しなければならない。 以上をまとめると、公的年金の支給が始まる65歳の時点までに1,000万円の資金を貯めて、4%の配当利回りの株式で運用できれば、「平均的な老後生活」は確保できる。老後の資金として1,440万円も準備する必要はなく、85歳以上長生きしても資金が枯渇することはない。 65歳の時点で2,000万円の資金を貯めることができれば、4%の配当利回りの株式運用だけで「ゆとりある老後生活」も射程圏に入ってくる。両方のケースとも定年退職後は老後の生活費を補うために働く必要がない。悠々自適の生活を送ることができるのである。
飛行機の操縦席(コックピット)のような計器は不要
高配当利回りの銘柄にうまく投資できたとしても、すべてが順調に運ぶとは限らない。 たとえば、投資したときには高配当利回りだったとしても、10年のあいだに投資した銘柄の株価が大きく値下がりしたり、配当が減配や無配になったりするかもしれない。倒産や合併で、投資した銘柄の株価が紙くず同然になっているかもしれない。 そうしたリスクを減らすための最も有効な対処法は、投資の対象を「業界のトップ企業」に絞り込むことだ。業界のトップ企業といっても千差万別である。今後予想される急激な技術革新やグローバル競争の荒波と無縁ではない。 しかしどの業界でも、トップ企業には資本力や経営ノウハウ、人材がそろっている。下位の企業に比べ生き残れる可能性が高い。 たとえば繊維やカメラの銀塩フィルムのようにグローバル化や技術革新で業界全体が斜陽化しても、東レや富士フイルムのような業界トップ企業であればあざやかな業態転換によって企業としての生き残りをはかることができた。 業界のトップ企業のあいだで分散投資を行なえば、株価の変動や減配・無配のリスクを大きく減らすことができる。 さらに言えば、高配当利回り銘柄への投資の大きなメリットは、経済や投資に関する小むずかしい理論や知識、用語、財務指標など知らなくても高いパフォーマンスをあげることができる点だ。経済の素人にはうってつけの手法だ。 配当利回りは、すぐに計算できる。『会社四季報』のページをめくって年間の予想配当金を調べ、それを株価(時価)で割るだけだ。『会社四季報』にはROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)、CF(キャッシュフロー)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)などの指標がたくさん記載されている。 しかし株式投資の素人にはその意味や活用法がよくわからない。計算方法も面倒そうだ。だが心配しなくてよい。こうした細かな指標はプロ向けの情報である。個人投資家は知っておいて損はないが、知っているからといって投資のパフォーマンスが上がるとはかぎらない。 こうした数値は、飛行機の操縦席(コックピット)の無数の計器が発するデータと同じだ。専門のパイロットが最新鋭の大型旅客機を安全運航させるときには不可欠だが、私たちが自動車を運転する場合はハンドル、アクセル、ブレーキの位置とその使い方さえ知っておけば十分だ。 プロのディーラーやファンドマネジャーが短期間で多くの銘柄に投資しなければならない場合には必須の道具となるが、少数の銘柄しか投資できない私たち個人投資家には、ほとんど必要ないツールといっても言い過ぎではない。