「成功という夢を追うバンドマン」。彼らへのインタビュー調査で見た"正しい生き方"の呪縛
働き方が多様化する現代において「夢」とは何を意味するのだろう? 『夢と生きる バンドマンの社会学』は、成功を夢見るバンドマンたちを対象に、数年にわたるインタビュー調査を基に、夢の出発点から終着点までを描き出した一冊である。 【書影】『夢と生きる バンドマンの社会学』 バンドマンのように夢を追う生き方を選ぶということは"普通"のレールからは外れてしまうかもしれない。だからこそ、いつの時代も魅力的に映るものである。著者の野村 駿(はやお)氏に話を聞いた。 * * * ――ご自身はバンド経験がないそうですが、なぜバンドを研究テーマに選んだのでしょうか? 野村 その質問、取材のたびにいただくんですよ(笑)。皆さん気になるみたいですね。 ――サブカルチャーに関する研究というと、そのジャンルに精通した人がやるイメージがありました。 野村 僕が大学に入学したのが2011年で、その頃、古市憲寿(のりとし)さんの『絶望の国の幸福な若者たち』のヒットの影響もあって、「ゆとり世代批判」批判や「若者批判」批判の、いわゆる「若者論」がはやっていたんです。 そういった本を読むのが好きだったので、自分もそんな研究がしたいと考えるようになって、教育学部にいたこともあり、"夢を追う若者"がいいなと直感的に思ったんです。意外とこれまであまり研究されてこなかったテーマですし。 ――最初に"夢追い"があったと。 野村 そこから、たまたま友達にバンドマンがいて、ライブハウスに連れていってもらったことがきっかけです。それが漫才だったらテーマはお笑い芸人だったかもしれません。なので、バンド経験どころか、音楽のことも詳しくなくて。 なんせビートルズの人数も知らなかったもので、バンドマンたちから「本当に知らないの?」と驚かれていました(笑)。 ――別のインタビュー記事でも「オアシスを知らないなんて!」と、周囲から驚かれていたエピソードがありましたね(笑)。