【本城雅人コラム】ソウルラッシュに団野騎手を乗せた池江泰寿調教師にも心を打たれた
【中央競馬コラム「ぱかぱか日和」】◇17日 「第41回マイルCS」(G1・京都・芝1600メートル) ソウルラッシュにとっては悲願のG1制覇となった。裁決から叱られると心配になるほど団野騎手は早々とガッツポーズ(過怠金5万円)。団野騎手とは3年前の凱旋門賞が行われたパリで初めて会った。自厩舎のクロノジェネシスの手伝いに来ていて、その場にはエントシャイデンでG2戦に騎乗した坂井瑠星騎手、自費留学していた西村淳也騎手もいた。三人の中では一番おとなしかった団野騎手がこんなにも喜ぶとは。G1は2勝目だが、自厩舎の斉藤崇厩舎にはGⅠを狙える馬が多くいて、いくつかは乗せてもらっている。本人はもっと勝たないといけないと自覚していたのだろう。そうした向上心が技術を高めているのは間違いない。 私は同時に団野騎手を乗せた池江泰寿調教師にも心を打たれた。ディープインパクトを育てた池江泰郎調教師の息子で、30代で調教師免許を取得した時から、いい馬が入ってきたエリートである。その期待通りの結果を残して、トップ調教師に上りつめた。 ただ、これはエリート調教師についてまわる悩みであるが、どうしてもトップジョッキー、外国人ジョッキーを乗せることになる。高い馬を買ってくれたのだから、馬主の希望も聞かなくてはいけないし、結果を残したい生産牧場の意見も優先しなくてはならない。 オルフェーヴルは池添騎手とのコンビだったが、凱旋門賞は馬主の希望でスミヨン騎手になった。他も武豊、福永、川田、ルメール騎手らが乗ることが多かった。 それがここ数年、厩舎を手伝ってくれる若手に大一番を任せることが増えた。17年の皐月賞(アルアイン)はまだ無名だった松山騎手で、22年のスプリンターズS(ジャンダルム)は荻野極騎手でともにGⅠ初勝利を与えた。他にも池江厩舎の良血馬に若手が乗っているのをよく目にする。 思えば父の泰郎調教師が送り出したもう1頭の代表馬、メジロマックイーンの菊花賞は、オーナーの反対を押し切って弟子の内田浩一騎手に乗せての勝利だった。馬だけでなく、人も育てる、父と並ぶ名伯楽の座に一歩ずつ近づいている。 (作家)
中日スポーツ