トランプ再選で関税引き上げの応酬が起こると、世界GDPの6%相当の貿易が減少(IMF世界経済見通し)
トランプ関税の世界経済への影響は甚大
明示されてはいないが、IMFが大きなリスクと考えるのが、米国でトランプ氏が再選され、そのもとで大規模な追加関税が導入されることだろう。トランプ氏は、中国からの輸入品に一律60%あるいはそれ以上、中国以外の国からの輸入品には一律10%~20%の追加関税を適用するとしている。こうした政策は、世界貿易を縮小させ、世界経済の大きな逆風となる。そして、米国の措置への報復で、他国でも同様な措置が導入されれば、世界に保護主義が蔓延し、経済への打撃はさらに大きくなる。 米国がすべての国からの輸入品に10%の追加関税を導入することを起点に、ユーロ圏、中国がその報復措置をとり、3地域間での輸入品に10%の追加関税が導入されるケースを想定し、IMFはシミュレーションを行っている。その場合、世界全体の財の貿易は25%程度も減少する。それは、世界のGDPの6%にも及ぶ巨額なものだ。 トランプ氏による一律追加関税の導入は、世界経済を一気に後退局面に陥れるインパクトを持っているだろう。ただし、そうしたトランプリスクは、米国民の間や金融市場では十分に認識されていないように感じられる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英