「重要だけど優先度が低い」初代プリウス開発でも活用された、先送りしがちな仕事をためないトヨタ流コミットメント術
最優先の仕事はすぐに取りかかることができる。しかし、重要だけど緊急性が低いタスクほど、頭ではわかっていても行動を起こしにくい。 【画像】森琢也さんの著書『トヨタで学んでハイブリッド仕事術』(青春出版社) そんなタスクの緊急性を「自分の中で高める」にはどうすればいいのか。 約10年間トヨタグループで優秀な人の仕事のやり方を観察し、学んできたという森琢也さん。 著書『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社)で取り上げられている仕事術は、どんな仕事でも通用する不変のスキル。初代プリウスでも使われた秘策を一部抜粋を一部抜粋・再編集して紹介する。
仕事の緊急性を自分で高める工夫
みなさん、ついつい先送りしてしまう仕事ってありませんか? うっかりすると、やることリストに長期滞留案件がどんどん積み重なっていきます。これらの多くが、「重要ではあるが優先度が低い仕事」です。 例えば「営業資料に掲載している古い参考データの差し替え」などもそうでしょう。 最新データに修正しなくてはなりませんが、つい後回しになってしまいがちです。 みなさんも多忙な日々を過ごす中で、「重要性は高いが緊急性が低いものは後回し」にしてはいませんか。 そこをどう克服するか。それには、その仕事の緊急性を「自分の中で高める」ための工夫が求められます。 3つのステップで説明します。
“損失の悲しみ”に目を向けてみる
【STEP1:損失回避バイアスを働かせる】 損失回避バイアスとは、2002年のノーベル経済学賞受賞者で行動経済学の先駆者であるダニエル・カーネマンらによって提唱されたもので、多くの人にとって「損失の悲しみ」は「利得の喜び」の2倍以上になると言われます。 「重要性は高いが緊急性が低い」仕事について、おそらく大多数の人が「そりゃ、やったほうがいいとは思っている」と答えます。 これは、まさに「利得の喜び」をイメージした発言です。 一方で、トヨタの仕事ができる人は、「やらずに放ったらかしたら、〇〇になるよね」という「損失の悲しみに」にも想像を働かせます。「損失の悲しみ」のほうが、心理的な影響は2倍であり、行動の優先順位を上げやすくなります。 また、カイゼンして得られる成果や称賛、何もせずに失う評価や信頼、これらを具体化することで、ポジティブな未来とネガティブな未来の振れ幅を大きくします。 振れ幅を大きくするほど、「いまやらなければ、損をする。損はしたくない」という気持ちがより高まり、行動の優先順位を上げやすくなります。