体を張ったプレーと卓越したリーダーシップで今季の近大を引っ張るFL中村志主将＝東大阪市内（撮影・月僧正弥）

【ノーサイドの精神】今季の関西大学ラグビーAリーグは第3節を終え、京産大、天理大、関学大が3連勝。この3校を2勝1敗で追う昨季4位の近大にシーズン前から注目している。 3年前にリーグ2位となり、9年ぶりに全国大学選手権に出場。このときのメンバーだった1年生3人が最上級生になった。この中にはパリ五輪の7人制ラグビー日本代表にも選ばれたWTB植田和磨がいる。下級生にも197センチの長身LO能勢涼太郎（3年）ら複数のU20（20歳以下）日本代表経験者、候補がおり、戦力が充実しているのだ。 そんな〝勝負の年〟のチームを主将として引っ張るのがFL中村志（こころ、4年）だ。 OBで神戸製鋼でもプレーした神本健司監督（46）はこう紹介してくれた。「1部レベルのFW第3列としては一番小さいのでは」。 161センチ、80キロは、確かに小柄だ。すべてを把握できているわけではないが、関東、関西の大学1部リーグの各試合のメンバー表をながめてもFWはおろか、BKにもなかなか見当たらない。 中学校の部活動でラグビーを始め、最初はCTB。大阪桐蔭高でFLに転向し、2年時には1学年上のNO・8奥井章仁（現トヨタ）らとともに花園に出場している。近大では、チーム事情で2年時にHOに転向。FLに戻った昨季途中からリーグ戦に出場している。 そんなトップレベルで活躍した小兵FLといえば、「炎のタックラー」と呼ばれた1994年度の全国大学選手権で優勝した法大の内田剛（167センチ）、世界的に見れば、という話だが、今夏、日本代表デビューした山本凱（177センチ、100キロ。東京SG）ら多くの選手が思い浮かぶ。彼らに共通するのは運動量だったり、何よりタックル、気持ちの強さだ。 中村の強みも例にもれず、体を張ったプレーにある。6日の関大戦（●25－31）では、鼻血を出しながら低いタックルを連発し、チームを鼓舞し続けた。 「（恐怖心は）ないです。サイズのことは逆に強みだと思っています。相手の死角から入れたり、一瞬のスピードは絶対にでかいプレーヤーより速い」と力を込める。