バスケの最高峰NBAで日本人初の監督を目指す「ダイス」こと吉本泰輔さん アメリカに渡って20年、成果認められ名将の「右腕」に
「ダイス?シボドー監督の右腕だね」。米スポーツ専門局ESPNのベテラン、ニック・フリーデル記者は「ダイス」という名前を聞くと即座に言った。 シボドー監督とは、米プロバスケットボールNBAで2度の年間最優秀監督に選出され、現在はニックスを指揮するトム・シボドー氏のこと。そしてダイスとは、ニックスのアシスタントコーチを務める吉本泰輔さん(42)だ。 名将の下で実績を積み、最高峰の舞台で広く知れ渡るその人が描く夢は、日本人ではまだ誰も経験のないNBA監督。「監督になることが目標。自分になり得る最高の指導者になりたい」と目を輝かせる。(共同通信ロサンゼルス通信員・山脇明子) ▽指導の道へ 大阪・大商学園高を卒業後、2001年に渡米した。短大を経て、全米大学体育協会(NCAA)3部のジョンソン・アンド・ウェールズ大に進学。バスケ部でプレーした後、卒業を前に指導の道を考え始めたという。ジョンソン・アンド・ウェールズ大で1年間アシスタントコーチを経験し「教えるということは昔から好きだった。この仕事がしたいと心から思った」と決意を固めた。 その後はNCAA1部のフォーダム大の大学院へ。「コーチを目指す上で、どのように教育するかを学びたかった。科目を教えるのもバスケを教えるのも教育で同じだと思った」と教育学を専攻した。バスケ部でマネジャーをしながら米大学の最高レベルを体感し、指導法も習得した。
▽師との出会い フォーダム大卒業後の2009年、ネッツで映像コーディネーターのインターンに採用され、NBAへの道が開かれた。映像を使ってさまざまな分析をするこの仕事は、ヒートを2度王者に導いたエリック・スポルストラ監督や2022~23年シーズンに2度目の年間最優秀監督に輝いたキングズのマイク・ブラウン監督らも経験した重要なポストだ。 2011年には、NBAで17シーズンの指揮経験があるマイク・フラテロ監督に請われ、ウクライナ代表でも映像コーディネーターを務めた。フラテロ監督の力添えもあり、この年にブルズ入り。ここで師と仰ぐことになるシボドー監督に出会った。 名将からも手腕を認められた。「彼がやっている全てのこと、彼の全てのやり方、それら一つ一つには理由があり、結果につなげている。毎試合、チームをしっかり準備させようという情熱があり、彼のように準備するコーチは他にいない」。シボドー監督がチームを変わっても呼び寄せられ「シボドーの右腕」と称されるようになった。