プロ入り直後は英語もダメだった川島永嗣が、7か国語を操れるようになるまで。なぜ今も学び続ける? 最も難しいのは「フランス語」と即答
「正直、高校を卒業した時はほとんど英語を喋れませんでした」
3月21日。今冬に14年ぶりにJリーグに復帰し、この日に41歳の誕生日を迎えた川島永嗣のインタビューを敢行した。 【インタビューPHOTO】14年ぶりにJ復帰!7か国語を操るレジェンドGK川島永嗣を41歳の誕生日に直撃! 日本が世界に誇る守護神、カワシマ――。その魅力と言えば、抜群のセービングとともに、圧倒的な語学力だ。「英語、フランス語、イタリア語、スペイン語。ポルトガル語とオランダ語も少しは分かる」というから驚きだ。日本語を含め、7か国語を操るサムライ戦士は他に類を見ない。 いかにして、それほどまでの語学力を身に付けたのか。興味津々に尋ねると、ジュビロ磐田の新背番号1は「正直、高校を卒業した時はほとんど英語を喋れませんでした。『パっと話せるようになったんでしょ』ってイメージはあるかもしれないですけど」と柔和な笑みを浮かべた。 「高校を卒業してプロに入ってからも自分で勉強していましたし、英会話教室にも通っていました。日本にいる時からイタリア語教室にも行っていましたね。例えば、赤ちゃんが言葉を本当に話せるようになるのは、2歳、3歳の時。それと同じように、自分の頭の中に語学が入ってくるのは、自分が思っているより時間がかかるんですよね」 苦労に苦労を重ね、やっとの思いで手に入れた語学。しかし、決してそこがゴールではない。 「今も勉強というか、学ぶことは続けています。実際に言葉に触れたり、勉強していなければ…例えば日本で生まれても、日本語を聞かなかったら、いきなり2歳の子が話せるようにはならないですよね。親や友達、兄弟と話すことで、段々学んでいくわけじゃないですか。それと一緒だと思います。 今でも続けてやらなければ忘れることも多いです。だから20年ぐらいやっているわけですよ(笑)。『自分は話せない』『分からない』と決めつけないことが大切だと思います」
言葉が話せることで広がる無限の可能性
日本人選手の前に大きく立ちはだかる言葉の壁。しかし、川島は海外挑戦を逆算した入念な準備で、その壁を打ち破った。外国人監督やチームメイトと直接コミュニケーションを取り、強固な信頼関係を築くなかで、プレーの幅はもちろん、あらゆる選択肢が広がったようだ。 「これはサッカーだけではありません。僕の場合はたまたま仕事がサッカー選手で、キーパーとしてやっていくうえでは必要なことでしたけど、やはり言葉が話せることで広がる可能性がある。自分が実際に話せたことで、それを多く感じてきました。 直接話す時に感じる相手の考え方や価値観は、人を介して話す感覚とは違いますし、人によってどういう背景で育ったのかも含めて、相手がどう感じるかも変わってきます。だから、そういうことを理解したうえで、たくさんの国の人とコミュニケーションが取れるのは、人生の幅が広がるというか、楽しみが本当に広がると思っています」 語源が同じで、ヨーロッパの言語には共通点があると言われる。英語を覚えることで、「他の言語の習得は、楽になります。学びやすくはなる」という川島に「一番難しい言語は何ですか?」と問うと、間髪入れずに「やっぱりフランス語」という答えが返ってきた。 「舐めていました。イタリア語は話せたので、『同じラテンだから、フランス語も簡単に話せるでしょ』って思っていたんですけど、難しかったですね。母音があると繋がったりするので、それに慣れるのは…そもそも日本にはない発音じゃないですか。だから聞くのも話すのも難しかったですね。 今は全然大丈夫ですけどね。ベルギー時代を含めると、ほぼ10年フランス語圏に住んでいたので、さすがに大丈夫です」 メスとストラスブールに在籍した川島が去った今、フランスリーグでは、南野拓実(モナコ)、伊東純也、中村敬斗(ともにスタッド・ドゥ・ランス)がプレー。日本代表の後輩である彼らもまた、現地の言葉でコミュニケーションを取っているのだろうか。 「僕がいたクラブは基本フランス語です。だからフランス語を話していないと、監督に『ちゃんとフランス語を話せよ』と言われていました。でもモナコとかだったら外国人も多いので、英語でもいけるかもしれないですね」 成長に終わりはない。プロ生活23年を数えるレジェンド、川島の野心は不変だ。選択肢が広がり続ける、唯一無二のキャリアにワクワクが止まらない。 ※第1回終了(全4回) 取材・構成●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)
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