63円 vs 35円。全国一律目安をまたぐ交渉は4度目で決着 「中小企業には厳しい」としながら、経営者側が歩み寄った背景〈鹿児島県最低賃金953円〉
鹿児島地方最低賃金審議会は9日、鹿児島県の最低賃金(最賃)を56円増となる953円で答申した。2002年度に時給で示す方式になって以降、過去最高の上げ幅。労使とも希望額とは開きがあるものの、労働者側は「おおむね妥当な金額」と評価、経営者側は「中小企業には厳しい」と漏らした。 【写真】鹿児島県の最低賃金の推移をグラフで見る(24年度は答申額)
改定額を議論する同審議会の専門部会で、労使側はそれぞれの主張を貫いてきた。2回目会合で労働者側代表委員は、物価高や若者の県外流出を懸念する現状を訴え、中央最低賃金審議会が示した全国一律50円の目安額を上回る63円を提示。「最賃は命を守るセーフティーネットだ」として、9日の最終会合まで固持した。 一方の経営者側代表委員は、引き上げは理解しつつも2回目会合では改定額の提示を見送り、3回目会合で「足元の経営実態を考慮した」として、目安額を下回る35円を示した。 最終会合で、経営者側は「日銀の利上げ政策など、目安額が出た7月と状況が異なる」と主張しながらも、物価高などを考慮し「45円」と歩み寄った。 隔たりは18円と大きかったが、最高額の東京をはじめ各都道府県で目安額以上の答申が相次いでいた。9日昼過ぎにはライバルとなる隣県の熊本でも54円引き上げ952円の答申があった。これらの情報もあり、最後は公益委員が示した56円増953円で決着した。
■最低賃金 パートやアルバイトなどの非正規労働者を含む全ての労働者に適用される時給の下限額。下回った企業には罰金が科される。厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が、引き上げの目安額を示し、各都道府県の審議会が実際の額を定める。毎年度、労働者の地域ごとの生計費、賃金、企業の支払い能力を考慮して改定する。諸外国と比べて低水準にあることや、地域間の格差が課題とされている。2023年度の最高額は東京の1113円で、最低は岩手の893円。鹿児島の897円は高知や宮崎などと並び全国40位で、金額では下からは3番目に低い。
南日本新聞 | 鹿児島