中国自動車大手が「複合翼型」の空飛ぶクルマ発表 広州汽車、EVの電池技術や部品調達網を活用へ
中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は12月18日、同社が開発中の空飛ぶクルマ「GOVY AirJet」を発表した。 【写真】広州汽車集団が2023年6月に発表した1機種目の空飛ぶクルマ「GOVE」 空飛ぶクルマは電動モーターでプロペラを駆動し、人を乗せて垂直離着陸できる飛行機械のことで、「eVTOL(電動垂直離着陸機)」とも呼ばれる。 GOVY AirJetの特徴は、プロペラ(回転翼)と主翼(固定翼)の両方を持つ複合翼型の設計を採用したことにある。垂直離着陸とホバリング(空中静止)ではプロペラの揚力を利用し、水平飛行時は固定翼が揚力発生と飛行姿勢の安定を担う。
■最長航続距離200キロ 広汽集団によれば、GOVY AirJetの最長航続距離は200キロメートル、最高飛行速度は時速250キロメートルに達する。その主な用途として、同社は3~4人の乗客を運ぶ(地域レベルの)都市間移動を想定している。 「鉄道などの地上交通機関に比べて、広州市から深圳市あるいは広州市から香港までの移動時間を7割短縮できる」 広汽研究院(訳注:広汽集団の研究開発部門)で空飛ぶクルマの開発責任者を務める蘇慶鵬氏は、GOVY AirJetの発表会でそう強調した。
空飛ぶクルマの商用運航は、中国民用航空局から耐空証明(訳注:航空機の安全性について国の基準に適合しているという公的な証明)を取得することが前提になる。 広汽集団は2025年にGOVY AirJetの耐空証明を申請すると同時に、機体の量産に向けた準備を進め、購入予約の受け付けも始める計画だ。 GOVY AirJetは、広汽集団が開発に取り組んだ2機種目の空飛ぶクルマだ。1機種目の「GOVE」は2023年6月に発表され、同社の技術発表イベントで試作機がデモ飛行を行った。
■中核技術にEVと共通点 GOVEは民生用ドローン(無人機)で一般的な、多数のプロペラを持つ設計を採用。しかし航続距離の短さと積載可能重量の小ささが弱点だった。 「われわれは航続距離がより長く、もっと多くの乗客を運べる(固定翼を併せ持った)複合翼型の空飛ぶクルマを開発していく」。広汽研究院の呉堅院長は、当時からそう予告していた。 プロペラを駆動するモーターや電池など、空飛ぶクルマの中核部品はEV(電気自動車)との共通要素が少なくない。
広汽集団の馮興亜・総経理(社長に相当)はGOVY AirJetの発表会で、EV事業で培った高容量電池、高性能モーター、自動運転システムなどの技術や部品調達網が、空飛ぶクルマの事業化に向けた基盤になるとの期待を示した。 (財新記者:方祖望) ※原文の配信は2024年12月19日
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