“大東亜戦争”と呼んじゃダメ? 陸上自衛隊がX投稿を削除...なぜ批判? 反対派の教授「“大”とつけたいなら“アジア太平洋日本大敗北戦争”だ」
これに佐々木氏は「大本営発表の形で、正確な情報や認識がゆがめられる中で、戦争が行われていた。戦争の目的も美化されていた。知識人には、本当にアジアを解放しようとしていた人もいたが、最悪な結果となった。そこには反省があり、間違いを美化し続けるのは、歴史修正主義と言わざるを得ない」と反論。
表現を使いづけることで、植民地化やナショナリズムをあおらないか。岩田氏は「アジアという概念自体が、ヨーロッパから押しつけられたもの。当時よく『日本が植民地主義をとるための口実では』との議論があったが、むしろ日本は植民地をなくすために全力を尽くしていた。『全部悪かった』の一言で片付けるのは問題だ」と答える。
近現代史研究者の辻田真佐憲氏は、今回の論点は「言葉自体の是非」と「自衛隊連隊の投稿として適切だったのか」の2つがあり、わけて考えないと混乱してしまうという。「前者は文脈次第で、学問領域でも忠実に使うケースと、批判的な意味を込める場合がある。後者は、やはり誤解を招く。短い文章に出てきて、解説もないと『あれ?』と思わせる。余計なことをやったに尽きる」と解説する。
今回、陸上自衛隊第32普通科連隊が行った「大東亜戦争」投稿について、木原稔防衛大臣は「硫黄島が激戦の地であった状況を表現するため、当時の呼称を用いたもの。その他の意図は何らなかったとの報告」「大東亜戦争という用語は、現在一般に政府として公文書において使用していないことを踏まえ修正」との見方を示している。 岩田氏は「表現の自由だから問題ない。アジア侵略を賛美する文脈であれば問題だ」というが、辻田氏は「個人ではなく、自衛隊公式のアカウント。政府や防衛省としての見解は議論されていない」と返す。また、論点は他にもあり、「“太平洋戦争”の呼称には、左派からの批判もある。戦場となったのは主にアジアだが、日米が太平洋上で戦っているようなイメージを持たれてしまう。そこで“アジア・太平洋戦争”という呼び方も出てきた」と補足した。