中国と韓国、そして北朝鮮を意識して生きる 中国の朝鮮族の帰属意識とは?
この旅でガイドをしてくた彼も、両親ともに朝鮮族であり、延辺朝鮮族自治州の中国国籍の朝鮮族である。 「中国の朝鮮族は、自分たちの帰属意識(アイデンティティー)はどこにあるのかと考え悩むことがある」と。同じ民族なのに世代間で大きく分かれると言う。 中国語を学ぶことができず、歴史に振り回された古い世代はやはり、朝鮮に自分たちのルーツを求める。ガイドは40歳代、古い世代と新しい世代の中間にいる。 「朝鮮語と中国語両方の言葉を学んだ者と、そうでない者との生き方は違う。両方を学んだ者は要領よく世間を渡ることができる」と彼は言う。
しかし、若い世代は、また違った価値観の中で生きている。両親の考え方ひとつで、子どもの語学力は大きく左右される。中国語が話せない若者がいる一方、韓国ソウルではなく、発展する中国の将来に希望を持ち、国内の大都市にある大学に進学させようとする家庭もある。近年の韓国経済の低迷、そして中国の発展を目の当たりにし、朝鮮族の帰属意識も多様化している。 「常に中国と韓国と、そして北朝鮮を意識しながら生きていかなくてはならない」と、ガイドは話してくれた。 この地域はたび重なる戦争に巻き込まれ、新しい国境が生まれた。その動乱の歴史の中を生きていくために、彼らはスキルを身に付け、うまく適応しているようにみえた。 (写真・文:村田次郎) 撮影場所:中国 吉林省 延辺朝鮮族自治州 2013年6月 ※この記事は村田次郎氏の「【フォトジャーナル】北朝鮮が見える街 中国延辺朝鮮族自治州」の一部を抜粋したものです。