元経産官僚が神山まるごと高専の校長になった訳 五十棲浩二「学生が主体的に挑戦できる環境を」
与えすぎず、意欲に対して引き出しを提示するような応援を
鈴木氏と田中氏の話からも、新しい学校づくりは一朝一夕にできるものではないことがうかがえる。五十棲氏は現状の課題について、こう語る。 「今は1年間のサイクルを終えたことで、よくも悪くもこのサイクルを回し続ければいいという安定の力が働きやすい状況にあります。ただ、私たちはこれまでにない学びの形をつくることを目指しています。さまざまなトラブルともうまく向き合いながら、挑戦し続けることが大事で、学生にも個々の葛藤と向き合って成長につなげてほしい。つねにフレッシュな気持ちで議論や挑戦ができる環境をどうつくり続けるのかが課題です」(五十棲氏) 校長としては、自身のカラーを出すというよりは、学生たちが主体的となって試行錯誤を楽しみながら、新たなチャレンジができる環境をつくりたいと考えている。 「そのためにも、大人が挑戦している姿を見せることが一番の応援だと思っています。教員も既存の枠にとどまらない多様なスタッフが集まっていますので、彼ら自身がロールモデルになることで学生たちに多様な価値観を示していきたい。手を出して何とかしてあげたくなってしまうのをこらえて見守る姿勢を共有したいですね。コーチングやメンタリングのような形で、学生自身が自分の状況を俯瞰して自己決定できるような支援は必要だと思っていますが、基本的には与えすぎず、学生の意欲に対して引き出しを提示するような応援を軸にやっていけるといいなと。日本の学びのあり方、高専のあり方、企業と学校の関わりのあり方に、一石を投じられるような学校をつくっていきたいと思っています」(五十棲氏) (文:國貞文隆、写真:神山まるごと高専提供)
東洋経済education × ICT編集部