【千利休の末裔が語る“いつも感じのいい人”の習慣・第5回】心を掃除することで人生が整う、茶人・千 宗屋の『きれい好き』の教え
お茶を点てるには、まっさらな茶巾だけあればいい
「茶の湯に関連した古いお話をひとつご紹介しましょう。ある時、千利休に、面識のない地方のお金持ちが大金を送りつけ、『茶道具一式を見繕って送ってほしい』と言ってよこしたことがありました。そこで利休がどうしたかというと、その大金をすべて使ってまっさらな麻布を購入し、送り返したのだそうです。利休の真意は、『お茶を点てるのに必要な道具とは、まっさらで清潔な茶巾(ちゃきん 茶碗などを拭き清める麻布)だけあれば十分だ』というもの。ことほどさように、清潔であることは、折り目正しさ、美しさ、相手に対する心づかいなど、すべてに通じる要素なのです。 実際に茶席でも、茶巾と茶筅(ちゃせん お茶を点てる竹製の道具。いずれも消耗品)だけは新品をおろして使うようにと教えられています」(千氏) ここに求められる清潔さ、すなわち「きれい好き」こそ、ふだんの身だしなみにも応用したいものだ。 (第6回に続く) 【プロフィール】 千 宗屋(せん・そうおく)/茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975 年、京都市生まれ。2003 年、武者小路千家15 代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008 年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013 年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014 年から京都国際観光大使。2015 年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。 Instagram @sooku_sen