「地方創生交付金の倍増」表明の石破首相⇒交付金に群がるコンサル&食い物にされる自治体…解決策は
医療・福祉・データ連携基盤の責任者「富士通」、物流「ANA」、地域ポイント「NTT西日本」……
プランの策定から事業の運営まで、何もかも民間企業に外注する市町村もある。その一例として中山教授が挙げたのは、岡山県の吉備中央町。’22年に国家戦略特区の一つであるスーパーシティの「デジタル田園健康特区」に指定された、人口1万人強の自治体だ。 「吉備中央町は町長を会長に『吉備高原都市スーパーシティ推進協議会』を組織しているんですが、事業を実施する8つの分科会には20社を超える民間企業の名前が並んでいます。たとえば医療・福祉やデータ連携基盤の責任者は富士通、物流はANA、地域ポイントはNTT西日本といった具合です。 吉備中央町に限ったことではなく、全国の自治体にさまざまな大手企業が入り込んでいます。でも、やろうとしていることはどの自治体も似たり寄ったり。一体、行政の公共性はどこに行ってしまうのかと思いますね」 町議会の会議録や公開資料を読むと、吉備中央町は’22年に健康特区の枠組みとは別の事業で、デジ田交付金の対象にもなっている。町は事業を推進するに当たり、産学官で構成する「吉備中央町デジタル田園都市推進協議会」を設立。 構成メンバーには町をはじめ、スーパーシティ推進協議会にも入っている岡山大学や富士通、岡山に本社を構えるシステムインテグレーターのシステムズナカシマなどの民間企業が名を連ねている。 実施団体として全ての事業を受託しているのは、有限責任事業組合(LLP)吉備中央町インクルーシブスクエア。町は「協議会は発注者、事業を実施するLLPは受注者」とするが、LLPの参加団体は協議会の構成メンバーと重複している。この件について、町議会で「利益相反の懸念が生じている」と問題になったようだ。 ◆「国が『コンサルを2社使え』と指示するのは……」 「北海道の更別村はスーパーシティの選定には漏れたものの、’22年に『スーパービレッジ構想』がデジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプに採択され、大きな額を得ました。しかし、吉備中央町と同様の問題を抱えているようです」 更別村は人口約3000人の小規模自治体。この村の首長は毎日新聞の取材に対し、デジ田交付金の獲得を目指すに当たって国家戦略特区の担当だった官僚(現デジタル庁幹部)から「コンサル2社体制」で臨むよう促されたと語っている。 村は官僚に言われた通りコンサル2社体制でスーパービレッジ構想をスタートさせたが、途中で1社が撤退。東京の建設コンサルタント、長大が事業を仕切ることになった。 「本来、交付金は自治体の裁量で使えるはずです。国が『コンサルを2社使え』などと指示するのは好ましくない」 デジ田交付金デジタル実装タイプの場合は国が自治体に、事業の実施主体となる官民連携のコンソーシアム(共同事業体)を作ることを求めている。更別村のスーパービレッジ構想も、村と地元企業4社、東京の企業4社で構成されるソーシャルナレッジバンク合同会社が運営主体となっている。 ところが、事業の受注者である長大が事業の発注者である合同会社の代表社員でもあることから、村議会で「利益相反の構造がある」と批判が出た。長大は企業版ふるさと納税で、村に多額の寄付もしている。