1敗守った琴桜、北の富士さんへの思いを力に 先代との縁で「孫のように」若い衆の頃から激励、悲願初Vで「しっかり恩返しして良い報告ができたら」【大相撲九州場所】
◇21日 大相撲九州場所12日目(福岡国際センター) 優勝10度の第52代横綱北の富士で、長年、本紙名物コラム「はやわざ御免」や解説者としても人気を博した北の富士勝昭さんが82歳で亡くなった。死去が明らかとなり、一夜が明けた本場所土俵では、偉大な先人への思いを抱いた大関陣がそろって白星。琴桜(27)=佐渡ケ嶽=は大栄翔を落ち着いて下し、豊昇龍(25)=立浪=とともに1敗を守ってトップ並走。新大関大の里(24)=二所ノ関=は尊富士を押し出して勝ち越した。 天国の2人の元横綱への思いも力にした完勝だった。左の喉輪と右からの張り手でグイグイ前に出た琴桜が、大栄翔を押し出して仁王立ち。先場所まで3連敗中だった難敵得意の突き押しに一歩も引かず、11勝目を挙げてトップ並走をキープした。 「攻めながら対応できた。思い切って取っただけです。目の前の一番に集中できている。しっかり準備してやれることをやるのが大事」 1敗を守ってラスト3日間に突入するのは、かつて「大関琴桜」が通った初Vロードだ。祖父の元横綱琴桜(先代佐渡ケ嶽親方)は、大関時代の1968年名古屋場所で13勝2敗の初優勝を果たした。V戦線には当時大関の北の富士もいた。 朝稽古から琴桜は、北の富士さんに思いをはせた。52代横綱が北の富士で53代が先代琴桜。祖父が北の富士さんを身近な存在にしてくれた。「同じ時代を戦った先代の名前を継いだ立場でもある。先代と(北の富士さんの)年が近いのもあって、孫のようにじゃないですけど気に掛けてくださっていたのかなと」 若い衆の頃から激励してもらっていた。9月の大関昇進披露宴では、北の富士さんの出席はかなわなかったが、早くから出席予定の返事があったという。「自分が番付を上げれば声をかけてくださることも増えますし、先代の供養にもなるので」と祖父とともに綱を張った元横綱から、元気をもらってきた。 大関5場所目。悲願の初優勝へ「もちろん、結果を求められる番付。しっかりどの場所でも狙っていく。しっかり恩返しして良い報告ができたら」。北の富士さんと祖父への感謝を胸にチャンスをつかむ。
中日スポーツ