阪神の平野コーチ1軍昇格とオリ糸井のFA獲得の深慮遠謀
阪神が、平野恵一2軍守備走塁コーチ(37)の1軍打撃コーチ、浜中治1軍打撃コーチ(38)の2軍打撃コーチへ配置転換する来季のコーチ人事を発表した。金本監督の要望に応えたもので、今季は、中盤までミスが目立ったバントや、エンドランなどの機動力部分の強化が狙い。平野新1軍打撃コーチは、現役時代に小技の上手さに定評があった。また平野新1軍打撃コーチの野球に取り組む真摯な姿勢と、常に声を張り上げるなど明るいキャラクターを評価、熱血漢の入閣でベンチの空気を一変させたいとの狙いもあるという。 ただ平野は、左打者。1軍打撃コーチとして来季も続投となった片岡篤史(47)も左で、金本監督も左。右打者を教えることのできるコーチが一人もいなくなったのは、指導体制として大きな問題点ではあるのだが、それらに目を瞑ってまで平野を1軍昇格させた裏には、もうひとつ“深慮遠謀”があった。阪神がアタックすることを決めているオリックスの糸井嘉男(35)のFA獲得に向けての環境整備だ。 平野・新打撃コーチは、2007年のシーズン終了後に、濱中治、吉野誠との交換トレードで阿部健太と共に阪神へ移籍したが、2012年オフにFAでオリックスへ復帰、2015年限りで引退するまでの3年間を古巣でプレーした。糸井も、2対3の大型トレードでオリックスに移籍したのが、2013年の春季キャンプ直前。平野と同時に移籍したという縁もあって、交流が深まり、仲のいいチームメイトとして3年間、共にプレーをした。 セ・リーグでの野球や、マスコミの攻勢が違う阪神でのプレーに不安を持つ糸井にとっては、もし阪神に入団することになれば、旧知の平野・新打撃コーチが、阪神の1軍にコーチとしていることは、最高のサポートになりえるし、チームにスンナリと溶け込むための“緩和剤”になることもできる。 阪神サイドは、当初、FA戦線に大きく出遅れていたが、糸井の調査を済ませて獲得に乗り出す方針を固めた。他のFA選手の調査も継続して進めていて1本化したわけではないが、一番手は糸井だ。 糸井は、全日程終了後、FA行使の意向をほのめかした。阪神だけでなく巨人、ソフトバンクら複数球団の争奪戦になることが必至。最終的には資金力のある球団での条件闘争となるだろうが、阪神は、糸井がFAを行使、交渉が解禁されるのを待って速攻でアタックする考え。金本監督の直接出馬も含め、球団として最大の誠意を示すプランを練っている。 オリックスの残留条件以上の金額、年数提示と同時に、平野が1軍コーチとして昇格したことも、糸井を説得するための材料のひとつになることは間違いない。糸井と旧知の平野の存在が、阪神にとって糸井獲得のアドバンテージになるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)